クランベリー
クランベリーに含まれる有効成分
小さな赤い果実・クランベリーには、数多くの成分が含まれていることが報告されていますが、中でも含有量が多いのは“ポリフェノール”と“有機酸”です。ポリフェノールにも様々な種類がありますが、特にクランベリーに特長的な成分として、“プロアントシアニジン”が挙げられます。また、有機酸として、クエン酸やリンゴ酸など果実によく含まれる成分も含有していますが、特にクランベリーに多く含まれる成分に“キナ酸”という成分があります。
“プロアントシアニジン(ポリフェノール)”と“キナ酸(有機酸)”、この2大成分のおかげで、クランベリーは次のような効果が期待できます。
●尿路感染症の予防
・膀胱炎再発予防
・尿臭軽減
・カテーテル内結石生成抑制
●口腔、消化管感染の予防
・口腔細菌のバイオフィルム形成抑制
・ピロリ菌の付着抑制
●美肌
・肌のはり、目尻のしわ改善
・肌の赤み改善
●生活習慣病の予防
・酸化LDL抑制
・ガン細胞の増殖抑制
以前より数多くの研究データが報告されているのは、クランベリーの「尿路感染症の予防効果」についてです。
また、キッコーマンでも「膀胱炎の再発予防効果」を初めとして、尿路感染症に関連する症状である「尿臭の増大を軽減する効果」や、アルカリ性の結石が尿中に浮遊することで発生してしまう尿管カテーテル先端部への「結石付着を抑制する効果」なども確認しています。
これらの効果はプロアントシアニジンとキナ酸に起因するものと考えられています。
また、最近では、プロアントシアニジンの幅広い抗菌効果により、歯周病菌やう蝕菌など「口腔細菌のバイオフィルム形成を抑制」、および「ピロリ菌の胃粘膜への付着を抑制」する有効性なども報告されています。
そして、特に女性が気になる症状である「肌のはり、しわなどの改善効果」なども報告されており、クランベリーには美と健康に対する非常に幅広い有効性が報告されています。
尿路感染症を予防する効果
まずはクランベリーの代表的な有効性である尿路感染症の予防効果について、そのメカニズムからご紹介していきましょう。
クランベリーの有効性成分のひとつ・キナ酸は、これ自体が効果を発揮しているのではなく、体内に吸収された後に、肝臓で馬尿酸に代謝(変換)されて、その馬尿酸が体内で分布・排泄される工程において、膀胱や尿路にたどり着いて尿のpHを酸性化させ、尿路感染菌の増殖を抑える効果があることがわかっています。
もうひとつの有効成分であるポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンは、感染菌の尿路への付着を抑制する効果があることも確認されています。
この2つの成分がそれぞれの効果を示すことで、尿路感染症の予防効果を発揮していると考えられています。
上記のグラフは、実際にクランベリー果汁飲料を飲んだ前後の尿のpHの変化を評価した結果を示しています。
左のグラフが健常者、右のグラフが人工膀胱を装着した患者の尿のpHになります。人工膀胱を装着している患者の尿のpHは比較的高い傾向にありますが、クランベリー果汁飲料を飲むと尿のpHが下がることがわかりました。
前出のデータでクランベリーの摂取による尿pH効果が確認できたため、尿路感染症のひとつである膀胱炎の発症を抑えることができるかの評価を行う臨床試験を実施しました。
単純性膀胱炎に一度以上罹患したことのある50歳以上の女性を対象に、クランベリー飲料摂取群とプラセボ飲料摂取群の2つのグループに分けて、6カ月間にわたって膀胱炎の再発状況について追跡しました。
その結果、クランベリー飲料を摂取したグループの方が、有意にプラセボ飲料摂取群と比較して、膀胱炎の再発率を抑えることがわかりました。尿路感染症は閉経後の女性が再発しやすい病気ですが、クランベリーを継続摂取することで再発予防効果があることが確認されたのです。
先ほどご紹介した臨床試験の結果が、日本感染症学会と日本化学療法学会の大きな2つの学会に評価され、「感染症治療ガイドライン2015」のなかで、高齢女性(閉経後)の膀胱炎が65%のクランベリー果汁飲料の1日1回の摂取により、有意にその再発を抑えるという記載にて紹介されています。
膀胱炎を発症すると抗生剤を投与する必要がありますが、この抗生剤の薬物耐性(薬の効き目が弱まる)が問題となっております。クランベリーは膀胱炎再発を抑制しますので、泌尿器科の医師もクランベリーの摂取を推奨しています。
また、膀胱炎もしくは膀胱炎の前症状において、尿中の尿素が感染菌により分解されアンモニアが発生して、尿臭を強くしてしまうことがよくあります。このような状態になると病室もしくは居室に強い尿臭が充満して、患者のQOL低下および看護者、介護者の作業環境の悪化につながります。
クランベリーは発生するアンモニアを中和して、尿臭を軽減することが確認されており、摂取開始後7~10日程度でその効果を体感することが期待できます。
また、上記は入院患者が尿管にカテーテルを留置している状況において、カテーテル先端部に結石が付着して狭窄を起こしている症例です。
尿臭のpHが向上すると、尿中にアルカリ性の結石が浮遊してくることがあり、この結石が尿バッグへの尿の移行を妨げ、カテーテルからの尿漏れにつながってしまいます。
クランベリーを2~3カ月程度連続的に摂取すると、アルカリ性の結石生成が抑制され、カテーテル先端部の結石付着が減少することがわかっています。
上記は、人工膀胱を装着された方のストーマの導入部が炎症・化膿を起こしてしまった症例です。
人工膀胱を装着している人の尿のpHは比較的高い傾向にあり、いわゆるアルカリ尿という状態になります。このアルカリ尿が皮膚に付着することで、炎症反応を起こしてしまいます。
クランベリーを連続的に摂取すると、キナ酸の代謝物である馬尿酸の影響により尿のpHが低下し、正常な尿pHに戻ります。それに伴い、炎症を起こしていた皮膚も治癒していきます。
このようにスキントラブルにお悩みの方にもクランベリーは推奨されています。
女性にうれしい美肌効果も
クランベリーには、抗酸化作用を持つ栄養素が豊富であり、しわやたるみ、乾燥など女性のお肌のお悩みを改善する効果があることもわかっています。
また、ビタミンC にも日焼けを予防する効果があり、美肌を目指すことができます。
上記は30代の女性を対象にした、クランベリーの美肌効果についての検証結果です。
クランベリー果汁飲料を4週間連続的に摂取し、その肌状態を評価したところ、クランベリー飲料を摂取したグループの方が摂取していないグループと比較して、目の下のたるみと目尻のしわが有意に改善することがわかりました。
また、はりのよさとしっとりさも評価しましたが、クランベリーを摂取したグループの方がしていないグループよりも改善する結果となりました。
さらに、この臨床試験に参加した被験者のなかで、摂取開始4週間後に頬の赤みが改善したという例もありました。
加えて、頬部位の肌のキメの状態が改善して、ふっくらと、均一な三角のキメが見えるようになった人もいました。
クランベリーにはポリフェノールのような抗酸化成分を始め、プロアントシアニジンのような抗菌効果を持つ成分も含有しているので、このような頬の赤みやキメの改善のような効果を発揮したのではないかと推察しています。
クランベリーとは?
感染症や肌の改善など、様々なところでその効果が認められているクランベリー。そもそもどんな成分なのか、詳しく説明していきましょう。
クランベリーは北アメリカの寒冷地に生育する生育するツツジ科スノキ属ツルコケモモ亜属に属する果実です。
生の果実は非常に酸味と渋味が強いので生食用に向きませんが、一般的にはジャムやジュースなどの加工食品として利用されています。特に、アメリカではクランベリージュースの飲用がポピュラーであり、オレンジジュース、アップルジュースに次いで3番目に多い消費量になっています。
クランベリーには非常に多くの成分が含有されていますが、特に注目すべき化合物は大きく分けて2つあります。
ひとつはポリフェノール類です。そのなかには、クランベリーの果皮の鮮やかなワインレッド色のもとになっているアントシアニン類や、ケルセチンなどに代表される様々な有効性を有するフラボノールの他、“ポリフェノールの王様”と呼ばれているプロアントシアニジン類も含まれています。
プロアントシアニジンには“A型”“B型”と呼ばれる種類がありますが、クランベリーにはA型が多く含まれます。A型はカテキン同士が2本の橋をかけたような結合で2個以上つながった特徴的な構造をしており、抗菌作用などB型にはない有効性を備えています。
そして、もうひとつの成分グループに有機酸があります。クエン酸やリンゴ酸など他の果実に含まれるものもありますが、クランベリーに含まれる特徴的な有機酸としてキナ酸という成分があります。
このキナ酸という有機酸とA型プロアントシアニジンというポリフェノールが、クランベリーの様々な有効性に関与していると考えられています。
このように女性のお悩みの強い味方となってくれるクランベリー。これからの健康や美しさのために、食品やサプリメントなどから意識して摂っていくのがおすすめです。