大豆イソフラボン
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大豆イソフラボンが与える効果とは?女性ホルモンとの関係や8つのメリットを解説
更年期の不調に悩んでいる方は、大豆イソフラボンが更年期症状の改善にどのように役立つのか知りたいのではないでしょうか。大豆イソフラボンは、女性ホルモンの一つである「エストロゲン」と構造が似ているため、女性ホルモンと似た作用を発揮することが分かっています。
本記事では大豆イソフラボンの効果や、摂取することで期待できる8つのメリットについて解説していきます。大豆イソフラボンの効果に関するよくある質問についても回答しているため、摂取するタイミングや安全性について知りたい方は参考にしてください。
大豆イソフラボンとは
大豆イソフラボンは、大豆に多く含まれるフラボノイドの一種であり、女性ホルモンであるエストロゲンと構造が似ていることから、「植物エストロゲン」「フィトエストロゲン」ともいわれています。
大豆イソフラボンには、不眠や抑うつ、めまい、イライラなどの更年期の不調を改善する効果が期待できます。また、骨粗しょう症の予防や肌の弾力を改善する、シワの面積を減少させるといった働きがあることも分かっており、更年期の美容と健康を保つためには、必要不可欠な成分といえます。

Arch. Gynecol Obstet. 2015 Aug 21. [Epub ahead of print) より改変
大豆イソフラボンは女性ホルモンと似た効果を発揮する
大豆イソフラボンは、「グリコシド型」と「アグリコン型」とに分けられます。このうち、糖が結合しておらず、体内への吸収率が高いのがアグリコン型です。アグリコン型の大豆イソフラボンは、「ゲニステイン」「ダイゼイン」「グリシテイン」の3種類に分けられます。3成分とも女性ホルモンの化学構造と似ており、女性ホルモンと似た効果を発揮します。そのなかでもゲニステインの女性ホルモン作用が、最も強いことが明らかになっています。

女性ホルモンが作用するためには、エストロゲン受容体という鍵穴のような部位に結合する必要があります。エストロゲン(女性ホルモン)やゲニステイン(大豆イソフラボン)といった鍵が、エストロゲン受容体(=鍵穴)にぴったり結合すると、強い信号のようなものが出て、更年期症状の予防や改善に役立つ効果を発揮します。

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大豆イソフラボンとエクオールの違い
大豆イソフラボンとエクオールの違いは、エストロゲン受容体との結合力の強さです。そもそもエクオールとは、「ダイゼイン」が体内に吸収される前に腸内で代謝生産されてできる成分です。
エクオールも大豆イソフラボン(ゲニステイン)と同様に、女性ホルモンと似た効果を発揮することが分かっていますが、ゲニステインのほうがエストロゲン受容体に結合しやすいとされています。なお女性ホルモン様作用は、エストロゲンが最も強く、次いでゲニステイン、エクオールの順に強いという報告があります。
大豆イソフラボンを摂取する8つのメリット
大豆イソフラボンを摂取するメリットは以下の通りです。
● 更年期症状や更年期障害の改善につながる
● 動脈硬化の予防につながる
● 乳がんリスクの低下につながる
● 男性は前立腺がんリスクの低下が期待できる
● 美肌効果が期待できる
● 骨粗しょう症リスクの低下につながる
● 血糖値調整効果が期待できる
● 認知機能の維持が期待できる
ここからは、それぞれのメリットについて解説していきます。
更年期症状や更年期障害の改善につながる
大豆イソフラボンを摂取することで、更年期症状や更年期障害の改善につながることが分かっています。「大豆イソフラボンアグリコン」25mg/日を8週間にわたり更年期の不調を有する40〜60歳の女性29名が摂取したところ、摂取開始前と比較して、血管運動神経症状(ホットフラッシュ、発汗、冷えなど)や、身体症状(疲労、めまい、頭痛など)を改善する効果が確認されています。

大豆イソフラボンが、減少していく女性ホルモンの代わりに働き、更年期の不調を改善する効果が期待できます。
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動脈硬化の予防につながる
更年期世代になると、女性ホルモンの減少により、LDL-コレステロール値が高くなることも。その結果として、動脈硬化を招いてしまう恐れがあります。動脈硬化を引き起こさないためには、日頃から予防の意識を持つ必要があります。
動脈硬化を含む生活習慣病を予防するためには、食物繊維やDHA、大豆イソフラボンの摂取が効果的とされています。特に大豆イソフラボンには、LDLコレステロールや中性脂肪を低下させる作用があることが分かっています。また、適度な運動を取り入れて、代謝の良い体作りも意識するとよいでしょう。

乳がんリスクの低下につながる
大豆イソフラボンには、乳がんリスクを低下させる効果があることが分かっています。40〜50代の女性約2万人を対象として10年間追跡調査を行ったところ、大豆イソフラボンをあまり摂取していない人に比べて、多く摂取していた人のほうが乳がんになりにくいことが確認されました※。
乳がんのリスク要因には女性ホルモンの減少が関係しているため、女性ホルモン様作用を持つ大豆イソフラボン(ゲニステイン)が効果を発揮したと考えられます。
※Tsugane 2010 日乳癌検診学会誌より
男性は前立腺がんリスクの低下が期待できる
男性の場合は、大豆イソフラボンに前立腺がんリスクを低下させる効果があることが分かっています。40〜60代の男性約4万人を対象として5年間追跡調査を行ったところ、大豆イソフラボンを多く摂取していた人は、前立腺がんになりにくいことが確認されています※。
※Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2007年16巻538-545ページより
美肌効果が期待できる
30〜40代の女性を対象にした臨床試験の結果、40mg/日の大豆イソフラボンアグリコンを継続的に摂取してもらったところ、2カ月経過後に肌の弾力が改善し、3カ月経過後にはシワ面積が非摂取群と比較して大きく改善されました。

更年期世代になると、肌が老化するほか、女性ホルモン(エストロゲン)が減少するため、シワやたるみが現れやすくなります。大豆イソフラボンを摂取することによりエストロゲンの減少が改善され、美肌効果が期待できます。
骨粗しょう症リスクの低下につながる
更年期の不調を有する40〜50代の女性90人が「大豆イソフラボンアグリコン」24mg/日を12カ月継続的に摂取してもらったところ、骨粗しょう症の指標となる「デオキシピリジノリン」の減少が確認されました。
骨粗しょう症のリスクを低下させるためには、日々の予防が欠かせないため、ビタミンDやカルシウム、大豆イソフラボンを食卓に取り入れるようにしましょう。

出典:Delia M. T. et al. J. Clin. Med. 2018, 7, 297-309
血糖値調整効果が期待できる
大豆イソフラボンのうちゲニステインには、血糖値を下げてインスリン感受性を改善する効果があることが報告されています※。また、このインスリン感受性の改善により、糖尿病の発症リスクが低減すると考えられます。
※Journal of Nutrition 2010年140巻:580-586ページより
認知機能の維持が期待できる
さらにゲニステインには、認知機能を改善する効果が報告されています。アルツハイマー病の初期症状がある患者に対してゲニステインによる治療を行った臨床試験では、ゲニステインの摂取でアルツハイマー病の発症を遅らせる可能性が示されました※。
※Viña et al. Alzheimer’s Research & Therapy (2022) 14:164より
大豆イソフラボンが多くのメリットをもたらす理由
このように、大豆イソフラボンを摂取することで、更年期症状をはじめ、更年期世代のさまざまなトラブルの改善が期待できます。その理由として、大豆イソフラボンが持つ、抗酸化作用と抗炎症作用が挙げられます。
大豆イソフラボンの抗酸化作用
更年期世代の女性は、加齢とともに抗酸化力が低下します。すると、活性酸素により細胞が損傷したり、がんや動脈硬化などの病気や生活習慣病のリスクが増加したりします。そんなリスクに対して効果的なのが、大豆イソフラボンの抗酸化作用です。大豆イソフラボンを定期的に摂取することで、病気の発生リスクが下がるほか、美肌効果などが期待できます。
大豆イソフラボンの抗炎症作用
大豆イソフラボンには、サイトカインの生成を抑制することによる、抗炎症作用があります。サイトカインとは、主に免疫細胞から分泌され、体内で細胞間の情報伝達を担っています。大豆イソフラボンには、サイトカインのなかでも、骨吸収や腫瘍の増殖などに関与するCOX-2や、細胞増殖や分化を抑制するTGF-βなどの生成を抑制することが分かっています※。そしてこれらの作用により、骨粗しょう症やがんなどの発生リスクを低下させることが期待できると考えられます。
※Nutrition Reviews, Volume 71, Issue 8, 1 August 2013, Pages 562–572,より
大豆イソフラボンを多く含む食品
大豆イソフラボンは、大豆を原料とする食品のほとんどに含まれています。しかし原料とする大豆の種類や食品の製造方法などによって、含有量が異なります。納豆や豆腐、きな粉などに多く含まれていることが分かっているため、1日の食事のなかで意識して摂取するようにしましょう。
大豆イソフラボン(アグリコンとして)を含む食品は以下の通りです。なお平均含有量(mg)は、食品100gに含まれる数値を示しています。
食品名 平均含有量(mg/100g) 1食あたりの含有量(目安) 大豆 140.4 1食(30g程度)でおよそ50mg きな粉 266.2 大さじ1杯(6g程度)でおよそ16mg 豆腐 20.3 1/2丁(150g程度)でおよそ30mg おから 10.5 大さじ2杯(30g程度)でおよそ3mg 油揚げ類 39.2 1/2枚(75g程度)でおよそ30mg 納豆 73.5 1パック(50g程度)でおよそ37mg 味噌 49.7 大さじ1杯(18g程度)でおよそ9mg 醤油 0.9 1かけ(6g程度)でおよそ0.054mg 豆乳 24.8 1パック(200g程度)でおよそ49.6mg
※厚生科学研究「食品中の植物エストロゲンに関する調査研究(1998)」をもとに作成
関連記事:大豆イソフラボンが多く含まれている食品は?主な働きや摂取量の目安も解説
大豆イソフラボンの効果に関するよくある質問
ここからは、大豆イソフラボンの効果に関するよくある質問へ回答していきます。
大豆イソフラボンはいつ摂取すればいいですか?
大豆イソフラボンは食品のため、摂取すべき適切なタイミングというものはありません。サプリメントで摂取する場合は、朝食後や寝る前など自分が摂取し続けやすいタイミングを見つけるとよいでしょう。
大豆イソフラボンの摂りすぎはよくないって本当ですか?
安全性の観点から、過剰摂取はよくないとされています。食品安全委員会では、大豆イソフラボンアグリコンの1日の摂取目安量の上限値を70〜75mgと定めています。ただし上限値以内の量を摂取する場合は、更年期症状の改善などが見られるため、毎日コツコツと「摂り続けること」を意識しましょう。
関連記事:大豆イソフラボンの摂りすぎはよくないって本当?摂取量の目安や上限についてわかりやすく解説
大豆イソフラボンに副作用はありますか?食品安全委員会が定める1日の摂取上限量(70〜75mg)以下の摂取であれば、問題ありません。また短期的に上限値を超えてしまったとしても、直ちに健康被害に結びつくものではないとも考えられています。なおイソフラボンは食品の成分であるため、副作用とはいいません。正しくは有害事象といいます。
大豆イソフラボンのサプリメントに効果はありますか?
一定の効果が期待できます。大豆イソフラボンのサプリメントには、ゲニステインやダイゼインなどが多く含まれており、日々の食事では摂取しきれない栄養成分を補うことができます。ただしサプリメントを併用してイソフラボンを摂取する場合は、1日の摂取上限量が30mg以内になるようにしましょう。
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サプリメントで足りない大豆イソフラボンを補おう

大豆イソフラボンを摂取することで、更年期症状の改善や美肌効果が期待できるほか、生活習慣病の予防にもつながります。毎日コツコツと摂取を継続することで多くのメリットが期待できるため、日々の食卓に大豆食品を取り入れることをおすすめします。
みそ汁や納豆、油揚げなどであれば、日々の食事に取り入れやすいですね。
大豆食品で一定量摂取し続けるのが難しい場合は、サプリメントで補う方法も有効です。1日の摂取上限量が定められているため栄養の補助が目的となりますが、納豆や豆乳と組み合わせると十分に大豆イソフラボンが摂取できるでしょう。
<この記事を監修いただいた先生>

秋津 憲佑 先生
キッコーマン総合病院 産婦人科部長
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