更年期の便秘・下痢の原因と対策

腹痛の女性

更年期に便秘・下痢が起きる原因は?症状の特徴や解消方法についても解説

更年期世代の女性のなかには、お腹の不調に悩み、仕事や生活のなかでトイレの場所を気にしてしまう方が少なくないようです。更年期に下痢や便秘が起こる原因は、女性ホルモンの分泌量のゆらぎによるもので、セルフケアを行うと症状の改善が期待できます。

本記事では更年期に起きる下痢や便秘の特徴、症状が起きる原因について解説しています。更年期の下痢や便秘に関するよくある質問についても回答しているため、お腹の不調に悩んでいる方は参考にしてください。

更年期に起きる下痢・便秘の症状

更年期世代の女性のなかには、下痢や便秘といった症状に悩まされている方がいます。「排便時に強くいきむ必要がある」「腹痛を伴う液状の便が排出される」といった症状が出る場合は、セルフケアにより症状を解消・予防することが大切です。

ただし自発的な排便回数が週に3回未満の場合や、3週間以上にわたって下痢が続いている場合は、「便秘症」や「慢性下痢症」の可能性があります。更年期症状ではなく病気の場合もあるため、痛みやつらさを感じるときは内科や婦人科などで、医師の診察を受けるようにしましょう。

下痢や便秘を繰り返している場合は医療機関を受診したほうがよい

通常の下痢や便秘と異なり、交互に繰り返す場合は、過敏性腸症候群や大腸がんの恐れがあります。

過敏性腸症候群とは、精神的なストレスなどが原因となり、便通異常を起こす病気のことです。慢性的にお腹が張っている、痛むような感覚がある場合は注意が必要です。また大腸がんでは、血便や腹痛、下痢と便秘を繰り返すなどの症状が見られます。いずれにしても早期の治療が必要となるため、症状が重いと感じた場合は医療機関を受診するようにしましょう。

更年期に下痢・便秘が起こる原因

更年期に下痢・便秘が起こる原因は、以下のようなものが考えられます。

●女性ホルモンの分泌量のゆらぎ
●更年期世代特有のストレス
●運動不足など生活習慣の乱れ

女性ホルモンの分泌量のゆらぎ

胃や腸では自律神経の働きにより、収縮運動やぜん動運動が行われています。更年期になると女性ホルモンの分泌量が低下して自律神経のバランスが乱れるため、腸のぜん動運動などが不調になり、便秘や下痢の症状が出ると考えられているのです。

また女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が低下すると、イライラしたり気分が落ち込んだりする症状も現れます。これらの精神不安がストレスとなり、便秘や下痢の症状が起きることもあるでしょう。

更年期世代特有のストレス

更年期症状が出やすい45〜55歳の世代は、家庭や職場の環境が変化する時期でもあるため、ストレスを感じやすいのではないでしょうか。日々の生活や仕事のなかでストレスを感じると自律神経のバランスが乱れるため、お腹の調子が悪くなってしまいます。

強いストレスを受けやすい環境にいる場合は、症状の悪化につながる場合もあります。周りの人に相談したり、ヨガや半身浴などを取り入れたりして、リラックスできる時間をつくりましょう。

運動不足など生活習慣の乱れ

生活習慣の乱れが下痢や便秘につながっている場合もあります。睡眠不足や運動不足、栄養バランスの偏りなど、生活習慣が不規則だと自律神経が乱れる要因となります。治療の基本は生活習慣の改善といわれているため、適度な運動や睡眠時間の確保など、できることから始めていきましょう。

更年期の下痢や便秘を解消・予防する方法

更年期の下痢や便秘を解消・予防するためには、以下のような方法が有効です。

●桂枝加芍薬湯などの漢方薬を用いること
●自律訓練法などでストレスを軽減させること
●便意を感じたらトイレに行くこと
●生活のスキマ時間に適度な運動を行うこと
●食物繊維や大豆イソフラボンの摂取を心がけること

桂枝加芍薬湯などの漢方薬を用いること

桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)や、加味逍遙散(かみしょうようさん)などの漢方薬を服用することで、更年期の下痢や便秘の症状を改善する効果が期待できます。下痢に悩んでいる方は「桂枝加芍薬湯」を、便秘に悩んでいる方は「加味逍遙散」を服用するとよいでしょう。

特に加味逍遙散は、更年期症状によるイライラや精神不安、不眠症などにも効果があるとされているため、下痢や便秘以外の症状で悩んでいる方にもおすすめです。

自律訓練法などでストレスを軽減させること

自律訓練法とは、自分の体を意識することで緊張を解きほぐす訓練法のことです。疲労回復やリラックス効果が期待できるため、ストレスを軽減させることができます。

自律訓練法は、以下の流れで行います。
1.落ち着いた環境で楽な姿勢になる
2.リラックスした状態で目を閉じて、ゆっくりと呼吸する
3.右手、左手、右足、左足の順番で、それぞれの「重さ」を感じていく
4.右手、左手、右足、左足の順番で、それぞれの「温かさ」を感じていく
5.手足の屈伸など、決まった動作で終了する

便意を感じたらトイレに行くこと

便秘を予防するためには、トイレを我慢しないことが大切です。当然のことのように感じるかもしれませんが、排便の我慢を繰り返していると、便秘になることがわかっています。便意を感じたら、仕事を中断してでもトイレへ行くようにしましょう。また毎朝決まった時間に排便を習慣づけることで、症状の予防効果が期待できます。

生活のスキマ時間に適度な運動を行うこと

生活習慣を改善することで自律神経のバランスが整うため、下痢や便秘の解消・予防効果が期待できます。運動不足を解消したいと考えている場合は、生活のスキマ時間で適度な運動を行うとよいでしょう。買い物や通勤の際はできるだけ歩くようにするほか、家事の合間にヨガなどを取り入れることで、運動不足が解消できます。

善玉菌を増やす食べ物を積極的に摂取すること

腸内を良好な状態に保つには善玉菌を増やすことが大切。ヨーグルトやチーズやぬか漬けなどの発酵食品で善玉菌を補給しましょう。善玉菌のエサとなって善玉菌を増やす働きを持つのがオリゴ糖。このオリゴ糖を多く含む納豆、やタマネギ、バナナ、ゴボウなどをたくさん食べるのもおすすめです。

食物繊維や大豆イソフラボンの摂取を心がけること

キノコや海藻、大豆食品などを摂取することで、下痢や便秘の解消が期待できます。キノコや海藻、大豆には食物繊維が豊富に含まれており、腸の働きを活発にして便通を促進するほか、下痢を予防する効果も発揮します。

また大豆食品には、女性ホルモンと似た作用を発揮するイソフラボンが含まれており、自律神経のバランスを整える効果があります。更年期のイライラや精神不安の改善が期待できるため、ストレスによる下痢や便秘の解消につながるでしょう。

また、大豆イソフラボンのなかでも体内に吸収されやすい成分に、「ダイゼイン」「ゲニステイン」「グリシテイン」の3つがあり、特に女性ホルモン様作用が強い「ゲニステイン」が更年期にはいいとされています。
食事やサプリメント等を活用しながら、大豆イソフラボンのなかでもゲニステインを摂取するとよいでしょう。

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更年期の下痢・便秘に関するよくある質問

ここからは更年期の下痢・便秘に関するよくある質問へ回答していきます。

更年期に下痢が続く理由はなんですか?

女性ホルモンの分泌量低下による自律神経の乱れが原因と考えられます。また、更年期症状によるイライラや気分の落ち込みが強いストレスとなり、下痢の原因になっている場合もあります。ただし、あまりに下痢が続くようであれば医療機関を受診したほうがよいでしょう。

更年期の便秘を解消するためにはどうすればいいですか?

生活習慣の改善を意識するとよいでしょう。生活のスキマ時間に適度な運動を取り入れるほか、食物繊維や大豆イソフラボンを食事のなかで摂取することをおすすめします。

更年期に便秘と下痢を繰り返す理由はなんですか?

過敏性腸症候群や大腸がんの可能性があります。更年期が原因ではない可能性が高いため、婦人科や内科などで早めに医師の診察を受けるようにしましょう。

規則正しい食生活を意識して症状を治療しよう

更年期に下痢や便秘の症状が出る原因は、女性ホルモンの分泌量低下により、自律神経のバランスが乱れることにあります。また更年期世代特有のストレスや、生活習慣の乱れも症状の原因とされているため、セルフケアを通じて症状の解消や予防を行うとよいでしょう。

生活習慣を見直す場合は、生活のスキマ時間に運動を取り入れるほか、規則正しい食生活を意識しましょう。朝昼晩と1日3食の栄養バランスを見直すことで、下痢や便秘の予防につながります。特に朝食は、腸に刺激を与えるきっかけとなるため、なるべく決まった時間にとることをおすすめします。