更年期のしびれ、原因と対策

更年期のしびれの特徴は?手足や舌、唇がしびれる原因も解説

「朝起きると、なんとなく手を動かしにくいような気がする」「お財布から思うようにお金が取り出せない」など、更年期になると手足のしびれを感じる方がいます。手足がしびれると、日々の生活や仕事でストレスを感じてしまいますよね。

本記事では、更年期症状に起こるしびれの特徴や原因、注意が必要な危険な症状について解説します。日々の生活で取り入れやすい対策や予防法についても解説しているため、しびれの症状をおさえたい方は、参考にしてください。

更年期のしびれの特徴

更年期になると、指や腕がしびれたり、朝起きたときに手がこわばるといった症状が起こることがあります。そのため、思うように手が動かせなくなってしまう場合があるほか、触ったものの感覚がよく分からないと感じる人が多いようです。

また、「夜間にしびれて熟睡感がない」「しびれで夜間や朝方に目が覚めてしまう」といった症状が出る人もいます。すると不眠がちになり、イライラや集中力低下にもつながりかねません。

顔や体がしびれる場合はすぐに医療機関を受診したほうがよい

手足だけでなく、顔や体がしびれる場合は、すぐに医療機関を受診したほうがよいでしょう。手足のしびれは更年期症状の一つですが、脳梗塞などの病気が隠れている場合もあるからです。
脳卒中の症状は突然現れる場合がほとんどですが、頭痛やめまい、手足のしびれなどの前ぶれ症状が起きることもあります。「顔半分がしびれて動きにくい」「片方の腕や足が突然しびれて動かない」といった場合は、すぐに救急車を呼んで、検査を受けるようにしてください。

更年期に手足がしびれる原因

更年期に手足がしびれる原因には、女性ホルモンの分泌量低下によるものも考えられます。女性ホルモンの分泌量が低下すると自律神経のバランスが乱れるため、女性ホルモン受容器のある関節包や滑膜(関節包の内側を覆い、関節をスムーズに動かす潤滑油を作る)に炎症が起こりやすくなります。

特に手のなかには、指を動かす腱と手指の感覚を伝える神経があることから、手がしびれる症状が出やすいと考えられています。

手足のしびれを引き起こす病気とは

更年期の症状だと思って放置していると、病気が隠れているような場合もあります。30分程度で症状が改善しないような場合や、症状が重いと感じたときは、早めに医療機関を受診するとよいでしょう。
手足のしびれを引き起こす病気には、以下のようなものがあります。

手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)
親指から薬指の親指側までにしびれが生じる。原因の多くは特発性といわれており、更年期女性に多い病気。

肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)
小指、薬指の小指側半分がしびれる。原因は、肘関節の変形や幼小児期の肘周囲の骨折に伴う肘変形によるもの。

頸髄症(けいついしょう)
両手にしびれが生じる。後縦靱帯骨化症という背髄を圧迫する病態や椎間板ヘルニアによるもの。

神経根障害
指の一部にしびれが生じる。後縦靱帯骨化症という背髄を圧迫する病態や椎間板ヘルニアによるもの。

脊椎管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)
頚髄に問題が生じると腕・肩まわりと下肢が、腰の神経に問題が生じると足がしびれる。椎間板や骨の変形などで、背骨にある神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫される症状。

脳梗塞
脳の梗塞が生じた側の顔面、その反対側の上半身または下半身に症状が出る。寒栓という血液の塊が血管を閉塞することで、血管の支配領域の脳細胞がダメージを受ける病態。

橈骨神経浅枝障害(とうこつしんけいせんししょうがい)
親指や人差し指の背中側の感覚をつかさどる神経が圧迫されて、手の甲の親指側に痛みやしびれを感じる病気。

更年期に舌や唇がしびれる原因

更年期に舌や唇がしびれる原因は、加齢や女性ホルモンの分泌量低下によるものだと考えられています。皮膚が薄くなり乾燥しやすくなることから、神経が刺激されやすくなるため、舌や唇がしびれたり、ピリピリしたりすると考えられます。

ただし、ほかの病気の可能性もあるため、症状が長引く場合や、しびれの症状が重いと感じる場合は、婦人科や内科医を受診するようにしてください。

更年期に手足のしびれが現れたときの対策

手にしびれの症状が現れたときは、手首から先をぶらぶら振ってみると、改善することがあります。ほかにも、下記の対策でしびれがやわらぐことが期待できます。

● 手関節の動きを止めて安静にする
● ホルモン補充療法(HRT)でエストロゲンを補う
● 半身浴やマッサージで血行を促進する

手関節の動きを止めて安静にする

手関節の動きを止めて安静にすることで、手のしびれがやわらぐことがあります。就寝時に「スプリント」などの装具を使用して、関節を固定するとよいでしょう。
また予防策として、手首を圧迫しないように、袖口がゆるめの服を着るようにするのも効果的です。手を頻繁に使う仕事をしている場合は、手首の使用頻度が少ない部署へ異動することで、症状が改善する場合もあります。

ホルモン補充療法(HRT)でエストロゲンを補う

更年期症状により手足にしびれが出ている場合は、ホルモン補充療法による治療も選択肢の一つです。内服薬や貼り薬など多くの種類が開発されており、エストロゲンを補うことで更年期症状の軽減効果が期待できます。
ただし、更年期症状を軽減させるためには「生活習慣の改善」が優先と考えられています。そのため、ホルモン補充療法による治療は必要最小限かつ、短期間の使用が前提とされています。

半身浴やマッサージで血行を促進する

血液の循環が良好でない場合、手足の末端まで血液が行き渡らなくなるため、しびれの症状が出やすいと考えられています。半身浴やマッサージで血行を促進すると、手足のしびれ症状の改善が期待できます。

ぬるめのお湯に20分程度浸かりながら、しびれのある部分をマッサージするとよいでしょう。また半身浴には自律神経のバランスを整える効果もあるため、しびれ以外の更年期症状が改善する場合もあります。

更年期の手のしびれの予防

対策と合わせて、予防法を3つご紹介します。

● 漢方薬を用いる
● ストレスを減らす
● ビタミンや大豆イソフラボンを摂取する

漢方薬を用いる

漢方薬は、更年期の不調や障害の改善によく用いられ、しびれの症状にも有効とされます。例えば、疎経活血湯は、関節痛による痛みやしびれに有効な漢方薬とされ、血液や水分の流れを良くすることで、症状をじっくりとやわらげていく効果が期待できます。
ただし、同じ症状でも体質によって合う漢方薬は異なります。専門知識を有した医師や薬剤師と相談して、ご自身に合う漢方薬を見つけましょう。

ストレスを減らす

ストレスは自律神経のバランスを乱し、女性ホルモンの分泌にも影響します。手足のしびれをはじめとする更年期の症状を悪化させないためにも、ストレスをなるべく軽減し、ホルモンバランスが整うように過ごすことが理想です。
ストレスを減らす一番の方法は、嫌だと思うことはしないこと。どうしてもしなければならないなら、短期間に集中して行うなど工夫するとよいでしょう。

ビタミンや大豆イソフラボンを摂取する

日々の食事のなかで手のしびれを予防したい場合は、カツオやバナナ、大豆食品の摂取がおすすめです。カツオやバナナに含まれているビタミンB6にはたんぱく質の代謝を促し、皮膚や粘膜の健康を保つ働きがあります。

また大豆食品などに含まれているイソフラボンは、女性ホルモンと同様の働きをすることが分かっており、自律神経のバランスを整えて、更年期症状を改善する効果が期待できます。

大豆イソフラボンの一種に、体内に吸収されやすい「ダイゼイン」「ゲニステイン」「グリシテイン」がありますが、そのなかでも特に女性ホルモン様作用が強いとされるのが「ゲニステイン」です。
手足や舌、唇がしびれるなどの更年期症状でお悩みの方は、食事やサプリメントなどを通して、ゲニステインを摂取するとよいでしょう。またゲニステインサプリを選ぶ際は、含有量が明記されているもの、推定値ではなく実測値が表記されているものがおすすめです。

関連記事:ゲニステインとは? 更年期女性にもうれしい効果を分かりやすく解説

更年期の手のしびれを大豆で改善した体験談

実際に、大豆イソフラボンの摂取で、手足のしびれが改善したという方の体験談をご紹介します。

更年期の手のしびれを大豆で改善【体験談】

起床時の手や右足の軽いしびれに悩んでいた方が、豆乳や豆腐などの大豆食品を1年間意識的に摂ったところ、しびれが改善されたそうです。ぜひ参考にしてみてください。

日常生活に支障が出ている場合は医師へ相談しよう

更年期になると女性ホルモンの分泌量が低下するため、手足や唇、舌といった部位がしびれる場合があります。30分以内に症状がおさまる場合は問題ありませんが、しびれが長引く場合や重いと感じたときは、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

しびれの症状を日頃から予防する場合は、半身浴やマッサージで血行の改善を促すほか、ビタミンB6や大豆イソフラボンを摂取して、自律神経のバランスを整えることをおすすめします。更年期症状はいつまでも続くものではありません。個人差はありますが、いつか終わりが来るため、日々のセルフケアを実施して症状の予防と改善を心がけましょう。

<この記事を監修いただいた先生>

田中 利和 先生
柏Handクリニック 院長
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