更年期の動悸・息切れの原因と対処法
長い階段を急いで駆け上がると、誰でも胸がドキドキしたり息が苦しくなったりしますが、そうした一般的な動悸や息切れとは別に、更年期のせいで動悸が起こることがあります。この記事では、更年期特有の動悸の特徴や簡単にできる対処法について紹介します。記事を読んで、動悸の具体的な対策をチェックしてみてください。
何が違う?更年期特有の動悸・息切れの特徴とは
一般的な動悸や息切れは、運動、ストレス、カフェイン摂取、または不安などの一時的な要因によって引き起こされることが多いです。また、心臓の病気、貧血、肺の問題、甲状腺機能亢進症など、さまざまな病が原因となって動悸が起こることもあります。
一方、更年期の動悸は、ホットフラッシュやのぼせ、発汗など、血管運動神経症状とともに起こることがよくあります。また、更年期の動悸の原因は、女性ホルモン・エストロゲンの分泌量が減少し、ホルモンバランスがゆらぐことによる自律神経の乱れなので、予想がとても難しく、いきなり症状が出ることもあります。例えば、「夜寝ていると突然ドキドキしてくる」「運動していないのにドキドキする」というのが、更年期特有の動悸の症状です。
【更年期の動悸の特徴】
□ 突然の動悸(心臓がドキドキする感じ)
□ 息切れや呼吸が浅くなる感覚
□ 胸部の圧迫感や不快感
□ めまいや立ちくらみ
□ 寝ている時に突然息苦しくなって目が覚める
□ 軽い運動でも息切れがする
□ 不安感や焦燥感を伴う動悸
□ 発汗を伴う動悸
□ 顔のほてりと動悸が同時に起こる
□ 疲労感や倦怠感と共に動悸を感じる
更年期の動悸の原因とは
更年期の動悸は、自律神経の乱れが原因です。卵巣の機能が低下してくると、女性ホルモン・エストロゲンの減少を感知した脳の視床下部がエストロゲンを分泌するように指令を出しても、卵巣がうまく反応できない状況に陥ります。視床下部からの命令はさまざまなところに作用し、自律神経の乱れが生じてしまいます。さらに生活習慣の乱れやストレスが加わると、そのバランスは一層悪化し、更年期症状が重くなってしまいます。
動悸・息切れが起きた場合の対処法
動悸や息切れが起きたら焦ったり不安を感じたりするかもしれませんが、まずは落ち着いて対処しましょう。ここでは、動悸や息切れが起きたときに簡単に取り入れられるセルフケアをいくつかご紹介します。
ゆっくり深呼吸する
動悸を感じたとき、肩の力を抜いて大きく深呼吸をしてみましょう。つらければ、座ったり、横になったりするとよいですよ。リラックスしていれば、しばらくすると動悸は落ち着きます。動悸が起こったときに落ち着いて対処できるよう、自分なりのリラックス法を日頃から見つけておくと良いでしょう。
手のツボを押す
手首の横ジワの上、小指側のくぼんだところにある「神門(しんもん)」と呼ばれるツボは、自律神経のバランスを整えるのに効果があります。ゆっくり深呼吸しながら、親指を差し込むように押してみてください。
アロマテラピーで心を落ち着ける
香りで心身のバランスを整え、疲れを癒やし、リラックスさせてくれるアロマテラピーもおすすめです。ご自身が心地良いと思える香りを選ぶとよいでしょう。
更年期障害の動悸のための予防と対策
更年期障害の動悸や息切れは、セルフケアを行ったとしても完全には予防できませんが、生活を整えることで、症状を緩和することはできます。ここでは日々の生活でできる、更年期の動悸のための予防法や対策をご紹介していきます。
食生活を見直す
自律神経を整えるためにも、1日3食、栄養バランスを考えた食生活をするように心がけましょう。なお、更年期症状の改善のためには、豆腐、納豆、味噌、きなこなど大豆製品の摂取がおすすめです。
大豆イソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンと構造が似ているので、エストロゲンの分泌量の低下を補ってくれます。そのため、更年期に大豆イソフラボンを定期的に摂ると、更年期症状が緩和されると考えられます。大豆イソフラボンを摂取することでほてり、のぼせのような血管運動症状や抑うつなどの精神症状などが緩和されると報告されており、動悸の軽減も期待できます。
ゲニステインが含まれているサプリを摂取する
大豆製品を日々摂取できればいいのですが、毎日一定量を摂るとなると、なかなか難しい場合も。そんなときは、大豆イソフラボンのサプリメントを摂るのもよいでしょう。摂りたい成分だけを摂取できるサプリなら飲みやすく、外出時でも気軽に摂れますし、日々継続しやすいというメリットがあります。
ちなみにイソフラボンは種類もさまざまですが、エストロゲン作用が強く、吸収性の高いゲニステインが配合されたサプリメントのほうが、より効果を体感しやすいとされています。そのため、ゲニステインの比率が高いイソフラボンアグリコンが配合されているサプリメントを選ぶのも良いでしょう。
運動を心がける
適度な運動は、自律神経の乱れを緩和してくれます。更年期には有酸素運動が良く、ジョギング、水泳、ヨガ、ウオーキングなどがおすすめです。無理なく、継続できる範囲で少しずつ体を動かしましょう。週に3回程度、毎回30〜60分くらいを目安に体を動かしてみてください。
更年期障害に効果が期待される漢方を服用する
更年期症状の緩和には漢方薬も有効です。「桂枝茯苓丸」「加味逍遙散」「当帰芍薬散」「半夏厚朴湯」などがよく処方されます。動悸も更年期症状なので、緩和が期待できます。ただし、漢方薬も副作用がゼロではありません。用法用量を守って飲み、不安を感じたら医師に相談してください。
更年期の動悸症状に関するQ&A
ここからは、更年期特有の動悸や息切れについて、よくある質問にお答えしていきましょう。
Q.更年期の動悸が起こるのはいつごろからですか?
更年期の動悸は一般的に40代後半から50代前半に起こることが多いですが、症状には個人差があります。動悸などを含む血管運動神経障害は、閉経の前後2年くらいに起こりやすいと言われています。
Q. 更年期の動悸はいつまで続きますか?
50歳後半になると症状が落ち着く方が多いようです。ただ、50代後半になっても、ストレス環境の変化によって症状が悪化する場合もあり、終了の時期も個人差が大きいといえます。
Q. 更年期の動悸症状が強く出やすい人はどんな人でしょうか?
更年期の症状には個人差があるため一概には言えませんが、自分一人で頑張ろうとしてしまう頑張り屋さんタイプの性格の人は更年期症状が強く出ることがあります。また、ストレスフルな生活やカフェインの摂取量の多さ、運動不足、不規則な生活、タバコ、アルコールなどは更年期症状が悪化する要因です。
他の病気が隠れている場合も
更年期の動悸や息切れには、他の病気が隠れている場合も考えられます。更年期の動悸と、病気由来の動悸は、どちらも症状に差はないので、自己判断では区別がつきにくいかもしれません。動悸がおさまらない場合はかかりつけ医(婦人科や循環器科)を受診しましょう。息苦しさを強く感じる場合は循環器科の受診をおすすめします。更年期の動悸と似た症状の病気には、以下のようなものがあります。
甲状腺疾患
甲状腺疾患の場合、動悸や息切れのほか、疲れやすかったりイライラしたりと、更年期障害と似た症状が出ることがあります。甲状腺疾患と診断されたら、ホルモンのバランスを整える内服薬での治療となりますが、改善されない場合には手術が必要なこともあります。
不整脈
不整脈は、脈のスピードが速くなったり、遅くなったり、不規則になったりと、様々なパターンがあり、動悸を感じることもあります。不整脈の場合、循環器内科で治療することになります。抗不整脈薬の内服による治療のほかに、カテーテル治療を行うことも。
貧血
貧血により動悸を感じることもあります。貧血の場合、体内の酸素不足を解消するために、酸素を体内に取り込もうとして、動悸が起こります。貧血と診断された場合は、鉄剤内服、また出血源がないかの精査を行います。
まとめ|更年期の動悸に落ち着いて向き合おう
更年期の動悸や息切れの症状が出た場合は、ゆっくり深呼吸したり、楽な姿勢をとったり、アロマテラピーなどを活用したりして、突然の動悸にも落ち着いて対応しましょう。なお、動悸がひどいときには医師に相談することも大事です。
更年期症状による動悸は、食生活や運動など、生活の見直しや、漢方薬などで改善する可能性があります。女性ホルモンに似た働きをする大豆イソフラボン、特にゲニステインを含むサプリを摂ることで症状が緩和することもあるので、ぜひ摂取を考えてみてください。
更年期には様々な症状が出てきます。今までなにも不自由なかった生活が少しずつ変わり、経験したことのないような症状が出現します。それに伴い生活もかわり、仕事も思うようにできず、イライラしたり気持ちが落ち込むことも多いと思います。
しかし、更年期は人生後半のスタートです。新たな自分を受け入れ、大切にしてください。
今までは無理が通っていたものも少しずつ自分を労り、環境を変えていきましょう。
<この記事を監修いただいた先生>
三輪 綾子 先生
産婦人科専門医
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