更年期の腰痛、その原因や特徴、治し方を解説
更年期世代の女性で腰痛に悩んでいる方は少なくありません。更年期に腰痛がひどくなる原因は、女性ホルモンの分泌量低下や、運動不足による血行不良にあると考えられています。本記事では、更年期に腰痛が起こる原因や、腰痛を予防するための方法について解説しています。更年期の腰痛に関するよくある質問へも回答しているため、症状に悩んでいる方は参考にしてください。
更年期に腰痛が起きる原因
更年期に腰痛が起きる原因の一つは、女性ホルモンバランスの乱れによるものだと考えられています。更年期になると女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が低下して、自律神経のバランスが乱れます。女性ホルモンには血液循環を良くする働きがあるため、分泌量が低下すると血流が悪くなり、腰痛の原因である老廃物が滞りやすくなってしまうのです。
また、運動不足も腰痛の原因といわれています。体を動かす習慣がないと筋肉がこわばってしまうため、血管が圧迫されて血液の循環が悪くなってしまうのです。特に冬は、疲労物質がたまって筋肉が固くなりやすいため、こまめなケアを心がけるとよいでしょう。
強い痛みを感じる場合は医師へ相談したほうがよい
腰痛が強く感じられる場合、それは骨粗しょう症や子宮内膜症のサインかもしれません。骨粗しょう症とは、骨の代謝バランスがくずれることにより、骨がもろくなる病気のことです。腰痛だと思って放置していると、骨折した際に骨粗しょう症だと気づく場合もあります。
子宮内膜症とは、子宮内膜が本来あるべき場所(子宮の内側)と違う場所に発生して、増殖と剥離を繰り返す病気のことです。30〜40代の女性に多く見られる病気で、月経痛や下部腹痛、腰痛などのさまざまな痛みを引き起こします。また、不妊症の原因になるともいわれています。
いずれも早期発見できれば、早期治療および重症化が予防できるとされているため、強い痛みを感じた場合は、婦人科や産婦人科などを受診するようにしましょう。
更年期の腰痛への予防と対策
更年期の腰痛への予防と対策には、以下のような方法が有効です。
●スキマ時間でストレッチを行うこと
●ウオーキングや半身浴で血流を改善すること
●ビタミンEやタンパク質の摂取を心がけること
●サプリメントで栄養を補うこと
スキマ時間でストレッチを行うこと
日常的にストレッチを行うことで血流が改善され、全身に必要な栄養素や酸素が行き届きます。家事や仕事の合間のスキマ時間で体を動かすことにより、生活習慣病の予防や筋力の維持にもつながります。
腰痛ケアを目的とする場合は、腰回りの筋肉をほぐし、背骨の柔軟性を高めるストレッチを行うとよいでしょう。骨盤、背骨、頭蓋骨まで連動させて上半身を大きく動かすことで姿勢改善にもつながります。 起床後または寝る前に、お布団の上でやってみてください。
腰痛ケアのストレッチのなかでも、ぜひ試したいのが更年期トータルケアインストラクターの永田京子先生がすすめる「ちぇぶら体操」です。更年期を前向きに捉えた「the change of life」が語源のストレッチ方法で、体の不調をその場で改善できることから、更年期女性に支持されています。腰痛ケアにおすすめなのが次のストレッチです。
1.肩関節の下に手首が、股関節の下に膝がつくようにハイハイのポーズをとる
2.おへそを覗き込むようにして、背中をゆっくりと丸める
3.斜め上を見上げるように首を動かし、背中を反らす。
上記の手順を5セット繰り返します。呼吸は自然呼吸でOKです。
背骨を動かすことに慣れてきたら、今度は肩甲骨周りまで大きく動かしていきます。背中を丸めるときに肩甲骨同士が両脇へ離れるように、背中を反らせるときには肩甲骨同士が背骨側に寄るように筋肉を意識して動かせば、肩こりの予防・解消にも効果が期待できます。腰が痛い場合は無理をせず、できる範囲で行うとよいでしょう。
ウオーキングや半身浴で血流を改善すること
血行不良を改善することで、腰痛の解消・予防効果が期待できます。特に時間をかけてゆったりと入浴を行う「半身浴」は、血流の改善効果が期待できるほか、自律神経のバランスを整える効果もあります。のぼせやほてりなどの血管症状、イライラや気分の落ち込みなどの精神症状にも効果が期待できるため、20分程度を目安として、半身浴を習慣化するとよいでしょう。
ビタミンEやたんぱく質の摂取を心がけること
日々の食事のなかで、腰痛ケアに有効な成分を摂取する方法も効果的です。ナッツ類やかぼちゃに含まれる「ビタミンE」や、大豆食品や肉類などに多く含まれている「たんぱく質」を摂取することで、腰痛の解消・予防効果が期待できます。ビタミンEには血流の改善効果があり、たんぱく質には体を温めて筋肉の緊張をほぐす効果があります。
サプリメントで栄養を補うこと
食事での摂取が難しい場合は、サプリメントで必要な栄養素を補う方法もあります。特に更年期世代は、女性ホルモンの分泌量が低下して自律神経のバランスが乱れやすい時期であるため、サプリメントで大豆イソフラボンなどの成分を補うとよいでしょう。大豆イソフラボンは、女性ホルモン(エストロゲン)と似たような働きをすることが分かっているため、腰痛以外の更年期症状がある場合も効果が期待できます。
大豆イソフラボンのなかでも、ゲニステインは女性ホルモンであるエストロゲンと同じような働きをするため、女性ホルモンの減少によって生じる更年期障害の改善に役立ちます。
不眠やめまい、頭痛、イライラ、疲労感などの更年期症状でお悩みの方は、大豆イソフラボンのなかでもゲニステインを含むサプリメントを摂取するとよいでしょう。
関連記事:ゲニステインとは? 更年期女性にもうれしい効果を分かりやすく解説
更年期の腰痛に関するよくある質問
ここからは更年期の腰痛に関するよくある質問へ回答していきます。
更年期になると腰痛になるのはなぜですか?
女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が低下するからです。エストロゲンには血液循環を保つ機能があるため、エストロゲンが減少すると血流が悪くなり、痛みの原因となる老廃物が滞りやすくなってしまいます。また猫背や反り腰など、姿勢の悪い状況で過ごしている場合も腰痛の原因となります。
更年期の腰痛を治す方法はありますか?
ウオーキングや半身浴を行うほか、ビタミンEを摂取するとよいでしょう。これらの方法を取り入れることで、腰痛の最大の敵である「血行不良」を改善させる効果が期待できます。ただし強い痛みを感じるときは病気が隠れている場合もあるため、婦人科や整形外科などで医師の診察を受けることをおすすめします。
更年期の腰痛にストレッチは有効ですか?
有効とされています。体を動かすと血流が改善され、腰回りに滞っているこりや、痛みの原因である老廃物を流し出してくれるからです。ストレッチを行うことで血流が良くなるため、腰痛の予防や改善が期待できます。また、肌のハリや髪のツヤが良くなったり、冷え性が改善したりする効果もあります。
セルフケアを取り入れて腰痛を予防しよう
更年期に腰痛がひどくなる原因は、女性ホルモンの分泌量低下や、運動不足による血行不良だと考えられています。
症状の改善・予防を行う場合は、生活のなかに運動習慣を取り入れたり、ビタミンEや大豆イソフラボンなどの成分を摂取したりするとよいでしょう。ただし痛みがひどい場合は、別の病気が隠れている場合もあるため、婦人科や整形外科などで医師の診察を受けるようにしましょう。
更年期の腰痛は、「自分自身を大切にして」という体からのサイン。更年期になると、これまで感じたことのないような不調に悩まされることがあります。いつもと違うと感じたら運動や食事、睡眠など生活習慣の改善で早めにケアをしてくださいね。更年期に見つけた自分のためのセルフメンテナンス方法は、この先の人生でもずっと使えるはずです。自分らしくごきげんに、快適に過ごすための心と体の土台を今からつくっていきましょう。
<この記事を監修いただいた先生>
永田 京子 先生
株式会社ウェルネスシアター代表 / 更年期トータルケアインストラクター
▼詳しいプロフィールを見る