更年期に試したい!入眠儀式や快眠グッズ

セルフケア


更年期世代のお悩みを、読者代表のヴィーナスたちがその道の専門家に相談して解決する「お悩み解決隊」。今回は寝つきの悪さに悩むキャリアウーマンのナオミが、睡眠コンサルタントの友野なお先生にインタビュー。友野先生の具体的なアドバイスの数々に、ナオミのメモを取る手が止まりません!



「眠りの悩み」は原因も複雑。更年期ならなおさら

ナオミ 友野先生、最近私、寝つきが悪くなっているんです。なかなか眠れない、眠りが浅いというのは、どういったことが原因なんでしょうか。

友野先生(以下、友野) 寝つきが悪くなり、睡眠の質が落ちる原因はさまざまです。夏から秋にかけては高温多湿で眠りづらいのもありますが、これからどうなっていくのだろうという将来への不安や仕事のプレッシャーなど、メンタルな要因も睡眠に影響が出ます。

コロナ禍になる前までは、通勤が割といい運動になっていました。それが在宅勤務になって、パソコンの画面と向き合って脳は疲れているものの、体が疲れていない。そのアンバランスで眠れない人も増えているようです。また在宅勤務でオンとオフの切り替えが難しくなり、生活のリズムが乱れて睡眠の質が落ちている人もいます。

その半面、職場と住まいが離れている人のなかには、通勤時間がなくなって睡眠時間が多く確保できるようになったと喜ぶ人もいるようです。また職場環境が良くなかった人がリモートになってストレスが減り、よく眠れるようになったという声もあったりするので、睡眠は本当にデリケートな問題だと思います。

ナオミ 私の場合、管理職としてのプレッシャーが原因のような気もしますが、52歳で更年期真っただなかだから、体も変化してきているのかな?と思ったりもして…。

友野 ナオミさんはお仕事がお忙しいのですね。そして年齢的なことも気になりますよね。確かに更年期にホルモンの影響で睡眠が妨げられることは考えられます。更年期はストレスに対する抵抗力や対応力が落ちる時期。これまで受け流せたことがスルーできずに心に留まってストレスを感じたり、ちょっとしたことで落ち込んだり傷ついたり。ホルモンの影響から来るストレス過多の結果、眠りにも影響が出やすいんです。

それに更年期はホルモンの影響だけではなく、年代的に仕事や、介護と子育てのダブルケア、トリプルケアの環境に置かれる人もいます。子育てと介護の両立でなかなか自分の時間が取れず、睡眠時間を削らなくてはならない。一家の柱として動かなくてはならず、うまくリフレッシュする時間もなく睡眠時間が圧倒的に足りていない…。そんな状況が重なる年代なので、どうしても眠りの問題は起こりがちです。

ナオミ 確かに更年期に入って、ストレスを感じやすくなっている気はしていましたが、日中のイライラが睡眠に影響しているとは考えていませんでした。

友野 ナオミさん、日本人の50代の女性って、世界で一番寝ていない世代なんですよ。この時期は睡眠の量が確保できないばかりか、質も低下しやすくなるのです。ちなみに学術的には睡眠の量より質にフォーカスしたほうがよいといわれています。実際、仕事や家事に忙しく、睡眠時間の確保が難しいと思うのですが、せめて眠りの質を高めることができれば、睡眠量の不足をいくらかカバーできるかもしれません。



やりがちな就寝前の悪習慣と解決法

ナオミ 睡眠の質を上げることができれば、睡眠時間の不足分はカバーできるかもしれないんですね…。とはいえ睡眠の質を上げるって、一体どうすればいいんでしょう。

友野 ナオミさんは、就寝前にスマートフォン(スマホ)を見てはいませんか?思い当たる場合はまず、寝る前のスマホ時間をなくしましょう。またSNS利用やニュースにも要注意です。一日働いた脳は夜にはとても疲れていて冷静な判断ができないことが多いので、夜は脳に入れる情報に細心の注意を払ってください。

<要注意!不眠につながる悪習慣>

●スマートフォンのブルーライト

科学的に、スマホのブルーライトは睡眠を妨げることが分かっています。消灯した暗い部屋でスマホを見続けるのは、目の健康のためにもNGです。

●心を乱すSNS利用

女性は特にスマホやPCからのネガティブな情報に影響を受けやすいです。SNSやインスタを通じて触れる情報にメンタルが左右され、いざ寝るときに真っ暗で静かな環境になると、雑念や負の感情が頭の中を巡って何時間も眠れなくなるという人はとても多いのです。

●深刻、悲惨なニュース

戦争や紛争などの情報で精神的に不安定になる方が増えています。脳が疲れている夜遅い時間帯に暗いニュース、つらいニュースを見てしまうと、なぜか自分事に感じてしまい、眠れなくなったり、悪夢を見てうなされたりということもよくあります。


<就寝前はこうして過ごそう>

●就寝30分前にはスマホを手放す

スマホは就寝前に手放すと決めましょう。せめて寝る30分前にはスマホを置くことが大事です。

●SNSを見ない

他人の生活が輝いて見えがちなSNSは、心が元気な日中にチェックしましょう。自分自身が幸せな気持ちで眠ることが、安眠のためにはとても大切です。

●夜はテレビをやめてラジオにする

どうしても気になるニュースがある場合は、テレビではなくラジオを選びましょう。視覚からのマイナスの情報をあえて受け取らない努力が大事です。繊細気質の方は、特に注意が必要です。

●気持ちが快眠に向く「入眠儀式」を挟む

この行動を挟むといい気持ちで眠りにつくことができる…。そんな自分ならではの「入眠儀式」(後述)を見つけて、就寝前に実行してみましょう。


毎晩取り入れたい!「入眠儀式」で快眠を

ナオミ 先生、先ほどお話に出た「入眠儀式」という言葉が気になります。どんなことをするといいのでしょう。

友野 儀式といっても簡単なことです。一日の行動を就寝前に一旦リセットして、自分のための時間をつくることを「入眠儀式」と呼んでいます。自分をオフにする時間を持って、気持ちを切り替えることが大事なんですよ。

介護をしている方、子育てをしている方、お仕事が忙しい方でも、寝る直前の5分、10分だけ、自分の日々の生活と全く関係ない行動をワンクッション挟んでから布団に入ることを習慣にしていただきたいのです。これは、「入眠儀式の前に何があろうが、これをすれば自分はすんなりと眠れるんだ」という自己暗示をかけるような行動療法なのです。入眠儀式の例をご紹介しましょう。


<入眠儀式いろいろ>

●塗り絵をする

今、結構流行っているのが大人の塗り絵です。きれいな色彩を自分で描いていくのは脳にも良いですし、ハマってしまいますよ。

●読書をする

就寝前の時間を読書タイムにするのもおすすめです。時間を決めて少しずつ毎晩読み進めましょう。

●ストレッチをする

ヨガやストレッチの動画を見ながら、体を動かすのも良いでしょう。深呼吸をするだけでもいいですよ。

●温かい飲み物を飲みながら旅行のガイドブックをめくる

ノンカフェインの温かい飲み物を飲みながら、旅行のガイドブックなどをめくってみるのもおすすめです。今度はここに行ってみたいな…なんてワクワクするはず。

●その日あった「いいこと」を思い出す

これは私のお気に入りの入眠儀式ですが、布団に入ってその日にあったいいことを思い出すんです。ランチがおいしかった、1本早い電車に乗れた、といった小さなことでいいので何個も思い出してみてください。「今日、自分はとってもラッキーだった」と幸せな気持ちで眠りにつくことができます。



「雑念が邪魔で眠れない!」そんなときはどうする?

ナオミ なるほど、入眠儀式はどれも簡単にできそうなので、私もトライしてみます。ただ、塗り絵を塗っている最中も、なんとなくその日仕事で起こったトラブルのことが頭から離れない…なんてことが私の場合起こりそうです。入眠儀式中に雑念が生まれる場合はどうしたらいいでしょうか。

友野 そうですよね。皆さん、すぐに雑念を払うことは無理だと思います。実際、私も最初はそうでした。入眠儀式を挟んでもなかなか無の境地になれず、どうしてもネガティブなことをいろいろ考えてしまう場合は、以下のように対処したらいいですよ。

●「雑念」と書いたラベルを貼って流すイメージを持つ

まずは雑念があってもよいと開き直りましょう。例えば私が「今からシロクマのことを考えないでください」と言ったとします。すると、考えたくないのに頭の中がシロクマのことでいっぱいになりませんか?つまり、雑念を「考えないようにしよう」と思うとつい考えてしまうので、「別に考えてもいいや」と開き直ることです。

そして、入眠儀式中に雑念や負の感情が現れたら、「雑念」と書いたラベルをその感情にペタッと貼ってベルトコンベアで流すイメージを持ってください。もやもやした考えがわいてきたら、「雑念」ラベルを貼り、さっと流す感覚が身につくと、固執している悩みや不安から徐々に距離を置くことができるようになります。

●五感フル活用で何かに没頭する

どうしても雑念にとらわれてしまうのなら、徹底的に五感をフル活用できる入眠儀式で雑念自体を頭から追いやりましょう。たとえばアロマをたき、温かいハーブティーを準備し、ハワイのガイドブックを置きながら浜辺の塗り絵を楽しむ。さざ波の音を流しながら「パンケーキを食べるのもいいな、ハンバーガーもいいよな」なんてつぶやきながら、徹底的にハワイムードに入り込んでください。ここまですれば、雑念の入る余地などきっとなくなりますよ。

ナオミ ありがとうございます、これならきっと私にもできそうな気がしてきました!



友野先生直伝!快眠に導いてくれるグッズたち

ナオミ 今まで安眠のための習慣をお聞きしましたが、安眠のためのグッズがあれば準備したいのですが、これがあるといい!というものは何かありますか?

友野 私の経験から、快眠によかったのはパジャマを着ること、足首を温めることですね。その他、枕や布団などの選び方もご紹介しましょう。

【パジャマ】

パジャマは良質な睡眠を取るためにとても大事だと考えています。パジャマとして上下セパレートで売られているものを着てください。きっと良質な睡眠が得られますよ。

▲ワンピースタイプ

私たちは一晩の間に20~30回、寝返りを打つのですが、ワンピースタイプだと寝返りを打つ際に寝具とワンピースの裾が足に絡まり、スムーズな寝返りができなくなってしまいます。「睡眠上手は寝返り上手」。上下セパレートのパジャマだと、寝返りがスムーズに打てます。

▲フード付きのパジャマ

フードが付いているパジャマは、枕との相性が悪くなるので理想的な寝姿勢が取れずに肩こりや首こりの原因になってしまうので、選ばないほうがベターです。

▲キャミソールタイプ

キャミソールタイプのパジャマは、肌の露出が多くて寝冷えにつながってしまいがち。結果的には睡眠の質が下がってしまうので、こちらもおすすめできません。

◎コスパNo.1は綿のパジャマ

自信を持っておすすめできるのは綿のパジャマです。パジャマに求められる吸湿性や肌触りなど、必要な機能がすべて詰まっている素材なので、とりあえず何を買えばいいか悩んだら綿を選びましょう。

◎前開きでもかぶるタイプでもどちらでも可

皆さんがパジャマと聞いて思い浮かべるイメージは、ボタンで開け閉めするオーソドックスなタイプだと思いますが、絶対に前開きのパジャマである必要はありません。かぶるタイプでも大丈夫です。

◎エステ気分ならシルク製を

エステ気分で寝たい方はシルク素材のパジャマがおすすめです。ただ、繊細な生地なので丸洗いできない場合もあり、綿ほどのコスパはありません。平日は綿のパジャマを着て、ガンガン洗って清潔に保ち、週末だけ自分のご褒美としてシルクのパジャマを着て睡眠エステタイム、という使い方なら割と負担が少なく、睡眠時間も有効に使えるのではないでしょうか。

【足元対策】

私は重度の冷え性で、真夏でも足首が冷えて眠れないことがあったのですが、足首を温めるようにしたらすごく眠れるようになりました。足はとにかく冷やさないようにすることが大事です。これには学術的な報告もあるんですよ。

更年期のホットフラッシュで汗をすごくかく人は「冷やさなくちゃ」と思うかもしれませんが、足首を温めるとよく眠れます。ぜひ試してみてください。

▲靴下

寒いからと靴下を履いて眠る方がいますが、これはやめてください。人間は内臓の温度が下がるときに眠くなるというメカニズムを持っています。内臓の温度が下がると、手足がぽかぽかしてくる。手足から内臓の温度を逃がそうとしているのに、靴下を履いてしまうと足先から熱が逃げるのをふさぐことになります。そうすると蒸れて不快感が起こり、理想的な睡眠が得られません。

◎レッグウォーマー(足首)

靴下の代わりにおすすめしたいのがレッグウォーマーです。長さについては冷えの度合いにもよりますが、基本的には足首だけのレッグウォーマーで、足を動かしたら取れてしまうくらいの緩さでOK。朝起きるといつも取れている状態で大丈夫です。

【目を温めるグッズ】

目元を温めると、手足が温まることにつながるということが分かってきています。そこで、ホットタオルや温めて使うアイマスクなど、目を温めるグッズも快眠には有効です。夏場であっても、寝る前は目元を冷やさず温めてみてください。



【枕】

ストレートネックなどを理由に枕を使わない女性はとても多いんですが、どんなにストレートネックでも枕は必ず使っていただきたいアイテムです。

▲枕を使わないこと

枕は頭のためにあるのではなく、後頭部から首にかけてくびれた部分を埋めるためにあるもの。高くても低くてもいいので、まずは「枕を使う」ことが大事です。

枕を使わないと、首に負担をかけてしまいますし、寝違えの原因になることもあります。枕のおかげで寝返りがスムーズにできるというメリットもありますので、枕は使いましょう。

◎実際に寝て、高さを調整して購入した枕

後頭部から首のくびれは人によって違います。実際に枕を使って横になり、寝返りを打ってみて、自分にとって体に無理がない高さか確認します。その後お店の方に見てもらった枕が理想的な枕です。

◎タオルで高さを調節してもOK

お店に行って枕を選ぶ時間がないなら、バスタオルなどで枕の代用をする方法もないわけではありません。ただ、後頭部は少し低めで、首のあたりはくびれに応じて少し高めに…など、微調整するにもタオルだと限界があるので、タオルは高さ調整程度に使うのをおすすめしています。

【布団】

枕と同じように大事なのが布団の選び方、使い方です。

▲夫と一緒の寝室で同じ布団をシェアする

パートナーと一つのベッドで就寝されている場合、男性は暑がりだから秋でも冷房をつけたいけれど、女性はそれでは寒くて…という悩みをよく聞きます。掛け布団に関しては、パートナーと大きな布団1枚をシェアするのではなく、個々で準備したほうがいいでしょう。

どうしても一つの掛け布団をシェアしたいなら、寒さを感じたときに女性だけもう1枚上から掛けられるよう、足元に薄手の布団を置いて寝るのがおすすめです。

▲重い布団を使う

昔は重い綿の布団がありました。重いほうが落ち着くという方もいるかもしれませんが、一般的には掛け布団が重いと寝返りが打ちづらいのです。また羽毛布団のように布団から体のラインになじんで、すき間を埋めて温めてくれるようなドレープ性が重い布団にはないので、あまりおすすめできません。

◎季節ごとに布団を変える

日本には四季があるので、季節によって布団も衣替えしていただきたいです。春と秋は同じ合掛け布団、夏は薄手の肌掛け布団を。冬にはぜひ羽毛布団を使っていただきたいです。

◎軽い羽毛布団を使う

冬におすすめの羽毛布団は、軽いので寝返りが打ちやすいんです。またとても柔らかいので、寝返りのたびに掛け布団と体との間にできるすき間をふんわりと埋めて、冬の冷気から体を守ってくれます。寝床内環境が良くなれば睡眠の質も良くなりますよ。

◎季節の変わり目には足元にもう1枚布団を準備

春先や秋口に、寒い日、暑い日がぶり返して掛け布団をどうすればいいか悩むことはありませんか?そんな季節の変わり目には、足元にもう1枚、薄い布団をストックとして置いて寝るといいですよ。足元に布団があれば、寒さを感じたときに寝ながら予備の布団を引っ張って、そのまま眠れます。


*  *  *  *  *

友野先生に伺う「快眠術大調査」の前編はいかがでしたか?後編では快眠のための寝室づくりや、快眠につながる生活習慣、マッサージやツボなどをご紹介いただきます。どうぞお楽しみに!


<この記事を監修いただいた先生>

友野 なお 先生
睡眠コンサルタント
詳しいプロフィールを見る

ナオミ
52歳。未婚。仕事では管理職としてバリバリ働いている。約1年前から頭痛や肩こり、目の疲れがひどくなり、最近では高血圧や高コレステロール、肌の乾燥の症状も。生理周期が極端に短くなってきているのが悩み。

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