更年期、生活の見直しやセルフケアで快眠へ
更年期のお悩みを読者代表のヴィーナスが専門家にインタビューして解決する『お悩み解決隊』。今回は前回に引き続き、キャリアウーマンのナオミが睡眠コンサルタントの友野なお先生に快眠のコツを聞いていきます。更年期の快眠術、後編スタートです!
徹底解説!ぐっすり眠れる寝室づくり
ナオミ 友野先生、前回のインタビューで入眠儀式や快眠のためのグッズの選び方をお伺いしましたが、寝室づくりについてもお聞きしたいです。室温や湿度はどう調節すればいいのでしょう。また部屋の明かりはうっすらつけたままのほうがいいのか、真っ暗にしたほうがいいのか、どちらでしょうか。
友野先生(以下、友野) 部屋の明るさについては諸説あるものの、ある研究では、60代以上のシニア層が眠るときにろうそく3~5本分のわずかな明かりを一晩中つけていると、うつ病の罹患率や肥満のリスクが高まるという研究結果が出ています。そのため私は一晩中「明かりをつけて寝ないほうがいい」とお伝えしています。
温度、湿度も睡眠に適したものがありますのでご紹介しましょう。
●部屋は暗くし、センサーライトを準備
寝るときは真っ暗ななかで寝たほうがよく眠れます。ただ、夜中にトイレに起きたときなど、目が暗闇に慣れていないときに明かりがないと不安な人はいると思います。そういう場合は、家具やオイルヒーターなどに触れて転ばないように、コンセントに差し込むタイプの人感センサー付きのナイトライトの使用をおすすめしています。
このナイトライトはベッドから足を下ろすとセンサーが人の動きをキャッチし、足元を照らしてくれるので、歩行の安全が確保できます。
寝入りばなに真っ暗なのは怖いという人もいますので、そういう人にも人感センサーのナイトライトは安心だと思います。
●ベッドの高さに温湿度計を置いて室温を確認
子どもは大人より少し寒いくらいの室温がちょうどよく、男性は女性よりも涼しさを好むもの。このように性別や年代によっても快眠の適温は異なります。
冬は16~20度くらいで、10度を切らない暖かさに室温を保ちましょう。暖房やオイルヒーターを使って室内を暖める場合、暖かい空気は上に流れてしまうので、サーキュレーターを併用して空気を循環させてください。
また、6~8月には室温が28度を超えないように、一晩中冷房をつけておきましょう。熱中症のリスクがあるので、「おやすみ機能」で最初の数時間だけ冷房をつけるのではなく、ずっとつけっぱなしにすることをおすすめしています。
梅雨の時期には快眠のために除湿も有効です。湿度は55%前後くらいが寝やすいでしょう。
快適な温度や湿度が保たれているかを確認するには、冷房や暖房の設定温度で室温を判断するのではなく、ベッドの高さに温湿度計を置いてチェックしましょう。壁の輻射熱に影響を受けて室温は変わってしまうので、自分の寝ている高さで適温を確認するようにしてください。
●ピローミスト等で枕に香りをつけるのも安眠効果あり
睡眠の質を良くするためには、香りの力を借りるのもいいですよ。ラベンダーやオレンジスイート、ヒノキ、ベルガモットなど…自分の好みの香りをピローミストとして枕にシュッと吹きかけると、気持ちよく眠れます。
学術的に「安眠に適した香り」はありますが、自分が好きかどうかにこだわって香りを選ぶことをおすすめしています。
眠りのための食生活、こんなところに気を付けて
ナオミ 快眠につながる食べ物はありますか?私はホットミルクを寝る前に飲むとか、カフェインを控えめにする、ちょっとお酒を飲んだら気持ちよく眠れると思っているのですが…。
友野 ナオミさん、実はあらゆるNG習慣のなかで一番やめていただきたいのが寝酒の習慣なのです。そのあたりから快眠のための食生活をお伝えしていきましょうね。
【飲み物】
▲絶対にNGなのは「寝酒」の習慣
日本人は諸外国に比べて、眠れないときに病院を頼る、睡眠導入剤を飲むという人は圧倒的に少ないのです。代わりに多いのが「寝酒」ですが、これは睡眠の全体的な質を落とすだけでなく、あっという間にアルコールに慣れてしまうことが問題です。眠れなくなると、もうちょっと強いお酒にしよう、もうちょっと量を多めにしようとお酒の量が増えがち。その結果アルコール依存症のリスクが高まるので、とにかく寝酒はやめてください。
▲夜はカフェインを控えるとベター
カフェインには脳の覚醒作用があることが分かっているので、夜8時以降は摂らないでください。ちなみに年齢が上がれば上がるほど、カフェインが作用する時間は長くなるので、早めに飲むのを控えたほうがいいです。60代なら、夜8時以降ではなく、夕方以降はカフェインを摂らないでください。
夕食中にお茶を飲む人も多いと思うのですが、緑茶はカフェインの含有量が高いので、緑茶ではない飲み物に変えたほうがいいですね。麦茶や蕎麦茶、コーン茶などに切り替えるのも一つの方法です。
▲ホットミルクもいいけど「眠くはなりません!」
よくいわれる「寝る前のホットミルク」ですが、ホットミルクの力で眠ろうとすると、ドラム缶半分くらい飲まないと意味がないのをご存じでしょうか。リラックスのためにはホットミルクはいいかもしれませんが、あくまで「眠くなる飲み物ではない」ことを覚えておいてください。
●リラックスするために温かい白湯を
夜寝る前に飲むものとしては、温かくてノンカフェインであることが基本です。温かい飲み物だとリラックス感も高まります。その意味だと、ホットミルクもいいのですが、温かい白湯もかなりおすすめです。
【食事】
●朝食、昼食、夕食にタンパク質を
快眠のために摂ったほうがいい栄養素はタンパク質です。タンパク質のなかに含まれているトリプトファンという成分が、睡眠ホルモンのメラトニンの生成につながることが分かっているので、朝食だけでなく、昼食、夕食にもタンパク質はぜひ積極的に摂ってください。
●朝バナナで幸福感と栄養価をプラス
朝バナナはぜひ取り入れてほしい快眠習慣です。バナナにはトリプトファンも含まれていますし、栄養価の高いミラクルフルーツです。海外の研究では黄色い食べ物は幸福感を増すという報告もあります。眠気が取れない朝、スイッチを入れたい朝には、バナナや卵などの黄色い食べ物を摂るといいですよ。
ナオミ そうなんですね、いいことを伺いました!早速明日の朝からバナナを食べて幸せを感じたいと思います。
ライフスタイルを改善したら眠りも変わる!
ナオミ 快眠のための生活習慣で、これを取り入れたらいいというものがあれば、ぜひ教えてください。
友野 日中の過ごし方を少し変えるだけでも、眠りの質を上げることができるので、いくつかヒントをご紹介しますね。
●朝起きたら窓際1mに15秒間立つ
朝起きたら、真っ先に窓際1m以内に立って15秒間、太陽の光を目に入れてください。この15秒間には、日中、意欲的に活動できるスイッチと、約14~16時間後に眠くなるという快眠の予約スイッチ、両方を押す働きがあるのです。晴れていても雨が降っていても、朝起きたら空を15秒間見上げてみてください。
●昼間に体を疲れさせる
リモートワーク下では難しいかもしれませんが、日中に体を疲れさせることが快眠につながります。私たち人間は、疲れたら眠くなるメカニズムを持っています。そのためよくしゃべる、よく笑う、よく活動するということがとても大事です。デスクワークで頭を疲れさせるだけでなく、ちょっとした運動を取り入れて、ぜひ体を疲れさせてください。
動画配信を見ながら体を動かすのもいいですし、時間がない場合はちょっとした行動に負荷をかけてやってみるのです。例えば階段の上り下りをあえて猛スピードでやるとか、足をすごく高く上げて歩いてみる、家事をあえて大きな動きでやる、よく使うものを高い位置に置いておいてストレッチをしながら取る、髪の毛を乾かすときにつま先立ちをしてみるなど…。工夫すれば、毎日の生活のなかに運動のチャンスが転がっています。
●ナイトルーティンを順序立てて決める
リモートだと特に、だらだらと時間を決めずに仕事を続けてしまいがちではありませんか?眠りにつく時間から逆算してナイトルーティンを決めましょう。仕事をやめる時間を決め、夕食の時間、のんびりする時間を計算しましょう。そして22時半から23時くらいにお風呂に入り、出たら軽くストレッチをしたり、温かいものを飲んだり、クリームを塗ったりして、午前0時に就寝する。
こうして自分なりの「就寝までの手順」をざっくりと決めて、日々淡々とこなすように習慣化できると、眠りに入りやすいと思います。
●サプリメントは体と心の「お守り」
眠りに問題があるから医師に相談したいけれど、忙しくてなかなか通院できない人、また「病院に行くほどの悩みでもない」と思いがちな人も多くいます。もし「自分のために何かしてあげたい」と思ったら、サプリメントを取り入れてみてはいかがでしょうか。睡眠コンサルタントをしていると、責任感が強くて繊細で頑張り屋さんほど眠りに問題を抱えているなと感じます。サプリメントは「お守り」のような存在。自分一人で頑張らずに、信頼できるサプリメントを見つけられたら、きっとそれが心の安らぎにもつながると思います。
ホットフラッシュの人の快眠のヒント
ナオミ 先生、実は私、ホットフラッシュの症状もあって、夜中に体が熱くなって起きてしまうんです。こういう更年期特有の症状がある場合の「快眠の工夫」はありますか?
友野 ナオミさん、ホットフラッシュで起きてしまうのはつらいですよね。寝具やパジャマを工夫すると、少しは改善されるかもしれません。
●敷布団カバー、枕カバーに接触冷感の素材を
ホットフラッシュで体が熱くなりがちなときには、枕カバーと敷布団カバーは接触冷感のものを使い、なるべくひんやりした状態を維持するといいですね。冷房だけに頼るのではなく、素材感で熱さを和らげるのです。
●パジャマの色を水色系に
体が熱くなるなら、パジャマの素材も綿より麻を選ぶとさわやかに眠れるかもしれません。また、色彩心理学の観点からは、水色系のパジャマを選ぶといいですよ。
これまでは特定の色を見るだけで心拍数が変化したり、発汗が抑制されたり、逆に促されたりするといわれてきました。最近は、着ることで色の効能が肌からも感じられることが分かってきているのです。そこで、寝ている間もクールダウン、トーンダウンできる水色系のパジャマを着れば、より涼しさを実感できるはずです。
ナオミ 睡眠中は色が見えないのに、肌で水色を感じて涼しくなれるなんて不思議ですね!早速、水色系のパジャマを探してみます。
眠りが足りない日のお昼寝はアリ?
ナオミ 私はあまり快眠できているとはいえないので、睡眠不足で日中もあくびをしてしまうことがあります。お昼寝して取り戻そうと思うこともあるのですが、夜に快眠できなかったら、翌日にお昼寝するのはOKですか?
友野 お昼寝は「あり」です。ただ、夜の眠りの質を上げるためにも、お昼寝には絶対守っていただきたいルールがあります。
●昼寝は15時までに
15時までにはお昼寝を終えてください。15時をこえて寝てしまうと、その日の夜の睡眠に悪影響が出ます。
●昼寝の時間は15~20分
短時間の昼寝は病気のリスクを下げ、健康に役立つといわれていますが、お昼寝が長時間になると逆に健康にとってリスクになります。更年期世代までなら15~20分、60歳を超えたら30分までのお昼寝に留めてください。
●座ったまま寝ること
横になって寝ると、深い眠りに入ってしまってなかなか起きられなくなります。お昼寝はあくまで仮眠です。椅子に座った姿勢のまま、目を閉じるのが理想的。
またお昼寝の前にカフェインを摂っておくこともおすすめです。カフェインは摂った20~30分後に効き始めます。つまり、カフェインの覚醒効果でちょうどいい時間にスムーズにお昼寝から起きられて、午後の仕事のパフォーマンスが上がりますよ。
●光を遮断するアイマスクも◎
昼間は明るいので、目を閉じていてもまぶたの上から明るさを感じるんですよね。そんなときにはアイピローやアイマスクで光を遮断すると、充実したお昼寝タイムが過ごせると思います。
快眠に効くツボ押しやマッサージとは
ナオミ 快眠のために押すとよいツボやマッサージはありますか?
友野 もちろんあります!ツボ押しやマッサージと、さらに快眠になるためのひと工夫も併せてご紹介します。
●失眠のツボ、湧泉のツボ
不眠を緩和してくれる「失眠(しつみん)」というツボがあります。これはちょうどかかとの真ん中あたりにあるのですが、自分の手で押そうとすると難しい場所なのです。そんなときは、ゴルフボールを用意して、座っているときやテレビを観ているときにかかとでゴルフボールを失眠に当てるようにグリグリするといいですよ。
また、「湧泉(ゆうせん)」というツボも不眠に効果があるといわれています。湧泉は足の指をぎゅっと丸めたときに最もへこむところです。ここもぜひ押してみてください。
●マッサージは自分自身を労わるタッピングが大事
快眠のためにするマッサージは、頭でも足でもマッサージする場所はどこでも大丈夫。血流が滞りがちな下半身をマッサージしたり、肩たたきでもかまいません。心が安定して幸せな気持ちになるためには、自分の肌をすりすりとなでたり、タッピングといって軽くたたいたりするだけでも効果があります。
●パートナーとマッサージ。幸せホルモンで快眠に
マッサージをする際に、パートナーがいる人はお互いにマッサージし合うのもおすすめです。夫婦でマッサージすると、ハッピーホルモンが出てお互いにとても癒やされるのです。ペットをタッピングしてあげても、幸せな気持ちになれて、睡眠にもいい影響があります。
こんなストレッチも安眠に効果あり!
ナオミ ストレッチもなんとなく快眠に良さそうなイメージがありますが、おすすめのストレッチなどはありますか?
友野 そうですね。皆さん、コロナ禍になってから、肩が内巻きになっています。そこで胸を開くストレッチをしながら、ゆっくりと深呼吸していくといいでしょう。
ストレッチは日中に行ってもいいですし、夜寝る前にネロリなどのアロマをたいて、雨音の効果音をかけながらゆっくりとストレッチで体を整えていくと、眠りにもとてもいいですよ。眠りのモードへの切り替えが上手になると自律神経も整いますし、更年期のつらい症状の緩和にもつながります。
●胸を開くストレッチ3つ
①うつ伏せで寝たらグーッと腕を支えにして上半身を持ち上げて反るストレッチ。「コブラのポーズ」とも呼ばれています。
②椅子に浅く座って、両手で椅子の後ろ側を持ち、息をいっぱい吸ったらふーっと吐きながら腕と胸を伸ばします。
③中指を肩に当てながら、肘で大きな丸を描くようにストレッチ。
医師に眠りを相談すべきなのはこんな段階
ナオミ 先生からいろいろなアドバイスをいただいて、自分でも睡眠の質を上げることはできそうだなと感じました。一方で、病院に行ったほうがいい睡眠の問題というのもあるのではないかと思います。どんな悩みのときに、クリニックを頼るべきでしょうか。
友野 ご本人がつらいと感じたら、ぜひ躊躇せずにクリニックに行ってお医者さまに相談していただきたいです。自分一人で闘っている時間が長ければ長いほど、改善までの道のりは遠くなるのです。自分でいろいろ試してもダメ、どうしよう…と悩む時間はなるべく短くしていただき、早い段階で気軽にお医者さまに相談してください。
睡眠外来でも、婦人科でも、内科でもいいのですが、不調の分だけ薬の数を増やす先生ではなく、薬の処方と併せて生活指導もしてくださるような先生に巡り合えるといいかなと思います。
ナオミ 眠りの問題が改善されないと、病気のリスクは高まるのですか?
友野 がんや高血圧、肥満、また全体的な生活習慣病、精神疾患など、睡眠の質の低下でリスクが高まる病気はいろいろあります。日中の眠気が強いということは、夜間の睡眠に何かしら問題があるということの裏返し。そんな兆候を感じたら、病気を未然に防ぐためにも積極的に眠りの問題を改善しましょう。
睡眠が変わればこれからの人生も変わる!更年期世代へのメッセージ
ナオミ 先生、最後に更年期世代へのメッセージをお願いします。
友野 睡眠の質が向上すると、心身の健康の質が向上しますし、美容の質も変わります。これは私の経験からも、学術的にも証明されています。
また、私たちが夜寝るのは、日中に活動するためですよね。つまり、睡眠に向き合うことは、昼間の過ごし方の質そのものにつながるのです。
睡眠の質の改善は何歳から始めても遅くありません。70代から睡眠の質を整えたらとても元気になり、会社まで立ち上げた女性もいらっしゃいました。思い立ったときから睡眠を改善すれば、体だけでなく心や肌の免疫力も高められて、可能性は広がっていきます。
ただ、睡眠の改善に真面目に取り組もうとすると、それがかえって眠れない状況をつくったり、ストレスの原因になったりもします。ぜひ不真面目に快眠に取り組んでください。そしてその不真面目な取り組みを習慣にして、継続してもらえたらいいかなと思います。
ナオミ 友野先生には2回にわたって快眠のためのたくさんのことを教えていただきました。「睡眠改善を不真面目に取り組む」…完璧主義の私にはこれが一番大事な気がしました。毎日ゆったりと幸せな気持ちでいることが、快眠には大切なんですね。あまり思い詰めすぎずに、じっくりと睡眠の質の向上に取り組んでみたいと思います。先生、本当にありがとうございました!
<この記事を監修いただいた先生>
友野 なお 先生
睡眠コンサルタント
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ナオミ
52歳。未婚。仕事では管理職としてバリバリ働いている。約1年前から頭痛や肩こり、目の疲れがひどくなり、最近では高血圧や高コレステロール、肌の乾燥の症状も。生理周期が極端に短くなってきているのが悩み。