更年期疲れにおすすめのセルフメンテナンス術

セルフケア


お正月が終わり、どっと疲れが出るこの時期。自分の体をメンテナンスして、気持ちよく新しい1年をスタートさせたいものです。更年期のお悩みをその道の専門家にインタビューして解決する「お悩み解決隊」では、疲れを改善するためのセルフメンテナンスを取り上げます。今回は小学生2人の母である専業主婦のヒロミが、目白鍼灸院・院長の柳本真弓先生のもとを訪ねました。



冬の寒さやお正月疲れ。この時期の疲れの溜まり方、癒やし方

ヒロミ 怒濤のような年末年始が終わり、子どもたちの冬休みが終わるのを待つ毎日です。働く女性は休む間もなく仕事始め。毎年この時期は、ママ友と顔を合わせると「疲れたね」という会話になります。

柳本先生(以下、柳本) 年末年始は大掃除やおせち料理など、いつもより家事が多い時期ですよね。家事がストレスになる方、逆にストレス発散になる方、人が集まる場面でストレスを感じる方など、疲れる度合いも疲労の出方も人それぞれかと思います。

東洋医学では、冬には寒さによる邪気が体に入りやすいといわれています。これは「寒邪(かんじゃ)」と呼ばれるもので、筋肉や関節の痛みが多く出やすいです。痛みは冷えると悪化し、温めると軽減しますが、寒さと湿気を同時に受けると症状がひどくなりやすいもの。

さらに寒いと体が縮こまり、体を動かす気も起きない…。そうなると気血の巡りが悪くなり、さらに関節と筋肉の痛みが増します。特に女性は骨盤内の臓器が男性よりも複雑なので、冷えやすく足腰に不調が出やすいのです。

ヒロミ だから体を温めることが大事なのですね。1月から年度末の3月にかけては誰しも忙しいと思うのですが、どんなことに気を付けて過ごせばよいのでしょうか。

柳本 忙しくなると、つい生活のリズムが乱れがち。こんなときこそ、なるべくいつものルーティーンを極端に崩さないようにするのが大切です。東洋医学のバイブル『黄帝内経』によれば「冬の養生は早く寝て遅く起きる」のが基本。この基本の生活リズムをなるべく崩さないようにしましょう。具体的には寝る時間、起きる時間を大幅に変えないようにし、予定にも余裕を持たせておくと、疲れ過ぎを避けられると思います。

年末年始はいつもより多く食べたり、飲んだり、普段会わない人とたくさん会ったりするので、想像以上にエネルギーを消耗しています。逆にのんびりし過ぎ、動かな過ぎ、誰とも会わずに1人でいたという人も、体と心がけだるく、重く感じることがあるかもしれません。頑張り過ぎず、すべてに余力を残せるように過ごせれば、お正月明けの体調がずいぶんと違ってきますよ。



更年期の疲労感。どうすれば軽くなる?

ヒロミ 家族や親戚の対応で、毎年お正月明けは疲れますが、更年期疲れの延長なのかなと思っていました。更年期に疲労や倦怠感を感じるのはどうしてでしょうか。

柳本 加齢とともに体力が衰えてくるのは自然なことではあります。ただ、更年期の疲れやすさは、ホルモンの急激な変化に加え、社会的な立場が変化することとも関係します

東洋医学では女性は7の倍数で体が変化するといわれていて、7×7=49歳がちょうど閉経するとされる時期。体が急な変化に対応できず、疲労感や倦怠感が出やすくなります

更年期は疲労のほかに不眠の症状も起きやすく、眠れなくてもいつか眠れるだろうと眠らずにいたら、そのまま倒れて入院されてしまった方がいます。またうつ症状が出て、自分なんて消えてなくなりたいと思ったほどだったと話してくださった患者さんもいます。

ヒロミ 更年期世代はちょうど子どもの受験や就職、親の介護などで、精神的にも落ち着かない時期ですものね。疲れて当たり前な気がしますが、どんな意識でこの時期を乗り越えればよいのでしょう。

柳本 まずは、20代、30代と更年期とでは体力や回復力が違うということを前提に、日々の予定を立てることが大切です。スケジュールをキチキチに詰め込まずに、余裕ある毎日を過ごしてください。ハードなスケジュールが続いたら、必ず2~3日は休みを入れるといったバランスにすると、気持ちも体も楽だと思います。

また、我々が行っているような鍼灸・漢方、その他の代替医療をうまく取り入れて、消耗しすぎる前に補うようにしてください。消耗しきってしまうと、それこそ回復に時間がかかりますから。


【代替医療の例】 

●アロマテラピー
●カイロプラクティック(主に骨格を中心に手技を用いて体を整える治療法)
●オステオパシー(骨格・膜組織・体液循環に働きかけ体を整える治療法)
●瞑想
●ヨガ
●カウンセリング など


ヒロミ つい「若い頃ならもうちょっとできた」と思ってしまいますが、ギリギリまで頑張り過ぎてはいけないんですね。


徹底解説!疲れが出やすい部位別のストレッチ法

ヒロミ 疲れているのは分かっていても、なかなかマッサージに行く時間もとれません。更年期世代が疲れやすい部位について、自分でできるストレッチ法を教えていただけますか。

柳本 分かりました。それでは毎日の生活のなかで取り入れやすい簡単なストレッチをお教えしますので、ヒロミさんもぜひやってみてくださいね。


【部位別のストレッチ法】

●首

スマホなどの画面を見るときに体幹の上に首が乗っているのではなく、少し顎が出たような姿勢になっていると首がこってしまいます。重だるい痛みがあり、首を回すと音がする、首の後ろの骨がでっぱるような形になるのは首が疲れているサイン。疲労予防のためには、スマホやパソコン画面を見る時間を減らすことと、姿勢の改善が大事です。 

<首のストレッチ>

①首の後ろに手を当てて、そこを支点にぐるっと頭を回す。逆も同様に。


②頭に手を当てて、首を伸ばす。反対側も同じように。



●肩

スマホを前かがみで見たり、ずっと同じ姿勢でパソコンの前に座っていたりすると、肩に痛みが出やすくなります。肩に重さ・張るような痛みなどを感じたら肩が疲れている証拠。スマホやパソコンを見る時間を減らしたり適度に休憩を挟んで気分転換したり、正しい姿勢で過ごすようにすると、肩こりの予防になります。 

<肩のストレッチ>

①右の肩に左手を、左の肩に右手を置く。


②手の位置を支点にして、左右同じように首を回す。逆側も同様に。



●背中

丸まった姿勢で過ごすことが多かったり、食べすぎで胃が疲れたりすると、背中が張ってしまい、じっとしていても痛むことがあります。

胃に問題がある場合は、空腹時や満腹時に背中が痛むケースも。

背中の疲れは、定期的にストレッチをすることで改善できます。ストレッチポールというグッズを使うと簡単に背中を伸ばせます。また、暴飲暴食は控えめに背中を温める(タオルを温めて患部に置く、湯たんぽや使い捨てカイロなどで温める)ことも効果があります。

<背中のストレッチ>

ストレッチポールの上に乗って手を広げ、手足の力を抜く。30秒~1分を1日3回くらい行うのを目安に。


ストレッチポールは、この上に寝て背中を伸ばし、エクササイズをしたり骨格を整えたりするための道具。



●腰

前かがみの姿勢が多かったり、骨盤と体幹がずれて骨盤のどちらかにずっと体重を乗せていたりすると、腰や足、お尻に痛みが出ることがあります(しびれを伴う場合も)。前かがみの姿勢になることが多いなら、ときどき背中側に反るように腰を伸ばすストレッチをするとベター。腰痛の予防や改善には、脚・腰・お尻のストレッチが有効です。 

ただし、しびれや痛みなどが出る場合はストレッチは中止してください。あくまでも「心地よい」程度に行いましょう。

<腰のストレッチ>

①手を腰に当てて、背中側から前に押すイメージで腰を伸ばす。


②うつ伏せに寝て、手を支えにしながら腰を反らせる。



ヒロミ ありがとうございます!ちなみにストレッチは、やればやるほど効果が出るものですか?

柳本 ストレッチは目的によって時間や回数は異なりますが、やりすぎないほうがいいです。目安としては10~30秒くらいのストレッチを1日3回位行うことが理想ではないかと思います。リラックスを目的としたストレッチなら、長めに心地よい程度にやってみてください。

またセルフマッサージをする場合も、「やりすぎない」ことが大事です。自分だとマッサージをしすぎてしまうので、1点を集中的に長時間押すのではなく、1カ所につき10秒×3回など、少なめのセットや回数から始めましょう。



おうちでのツボ押しやお灸のポイント

ヒロミ 先生、疲れや冷えなど、更年期の私たちに効くツボもぜひ教えていただきたいです。

柳本 分かりました。それではいくつかおすすめのツボをお伝えしますね。


【手や足の冷えに効くツボ】

八邪(はちじゃ)

手の冷えに効くのが八邪のツボ。手の水かき部分を押す。


八風(はっぷう)

足指の水かき部分のツボ・八風を押す。足の冷えに効くといわれている。



ヒロミ ツボ押しは、いつどのように行うのが良いのでしょうか。

柳本 夜、布団に入る直前に、手や足のツボを押すといいですよ。痛みを感じるくらいに押すと、目が冴えて眠れなくなってしまうので、心地よいくらいの強さで押してください。1回あたり5押しほど、1日に3回行う程度で大丈夫です。

また自分で行うお灸もおすすめです。なにより香りに癒やされますし、免疫力が上がり冷えも改善します。準備するものはお灸とライター、灰皿、お灸点火用の線香。火を使わないお灸もあるので、いろいろと試してみるといいでしょう。三陰交(さんいんこう)というツボにお灸をしてみてください(顔ややけどしやすい場所は要注意)。


【婦人科全般に効くとされるツボ】

●三陰交

冷えや婦人科の症状に幅広く効果があるのが三陰交。うちくるぶしから指4本上の位置。



プロのマッサージ師さんに頼るタイミング

ヒロミ 疲れがたまり過ぎたらプロの手を借りたいと思うのですが、プロのマッサージ師さんを頼ったほうがいい疲れの目安みたいなものはあるのでしょうか。

柳本 セルフケアを毎日やっても疲労が取れないなら、プロの手を借りるタイミングかもしれません。

ヒロミ 自分に合うマッサージ師さんは、どうやって選べばいいのでしょうか。ついつい人気のお店に行きたくなりますが…。

柳本 こればかりは相性があり、評判の良いマッサージ師さんが必ずしも自分に合うとは限らないのです。とにかく受けてみるしかありません。

いろいろなマッサージを受けてみると、自分は弱い圧が好きなのか、強い圧が好きなのか、オイルマッサージが好きなのかなどが分かると思います。ただ、マッサージを受ける日の自分や施術者の状態によっても効果は変わります。そもそもマッサージが好きではないんだ、と気づく場合もあるかもしれません。

ヒロミ 自分はマッサージが好きではないのかもしれない…そんな観点で考えたこともありませんでした。実は揉み返しがつらいので、近所のマッサージは1度行ってやめてしまいました。

柳本 揉み返しや体調不良になるのは、マッサージ師さんとの相性が悪い・マッサージの時間が長すぎる・圧が強すぎるなどの原因が考えられます。そもそも求めているのはマッサージではなく、温泉やストレッチなど、ほかの療法の方が合っているのかもしれませんよ。

ヒロミさんは鍼灸を試したことはありますか?鍼灸ではみ返しは起こらないので、ご経験がなければぜひトライしてみてください。2週間に1回くらい、メンテナンスとして鍼灸に通うことをおすすめします。

ヒロミ なるほど、鍼灸はしたことがなかったので、今度挑戦してみたいと思います!

ちなみに、プロのマッサージ師さんにはどのくらいの頻度で行けばいいのでしょうか。

柳本 患者さんは皆さん、ご自身の体の状態やスケジュールにより来院されています。週に1度、2週に1度など様々ですね。症状が強い場合は、週に1~3度というのがひとつの目安だと思いますが、施術の時間や施術スタイルによっても違いはあります。

運動習慣のない方も多いと思いますが、首・肩・背中・腰を支えるには筋肉が必要で、冷えを改善するにも筋肉を動かすことや筋肉の量が必要になってくるので、運動をして筋肉をつけることはとても大事です。鍼灸の施術を行っていても運動習慣のある人は施術時の感受性が高いなと感じています。少しの刺激で反応が起こる場合が多いんですよ。ヒロミさんはいつも運動をされていますか?

ヒロミ 私はあまり運動していないです…。それが疲れの原因かもしれないのですね。マッサージ師さんや鍼灸師さんに頼ってばかりでなく、自分でも筋肉をつける努力が必要だったんですね。

アクティブな毎日を楽しむ女性



更年期世代に大事なのは「日々のメンテナンス」

ヒロミ 柳本先生、更年期世代はストレスを抱えがちな年代ですが、心身の調子を整えるための生活習慣や気持ちの持ち方のヒントを教えていただけますか。

柳本 先ほどもお伝えしましたが、予定を詰め込み過ぎず、スケジュールにゆとりを作って、気持ちに余裕を持つこと。そしてセルフケアを習慣づけていただきたいです。また、更年期世代は加齢により生命エネルギーが衰えやすい世代でもあります。自力で体調を立て直すことが難しい場合や、心身が疲れたときは、マッサージや鍼灸、その他の治療を受けるのも一つの手かと思います。

更年期から先は、日々のメンテナンスが効いてきます。マッサージ・運動・瞑想・食事など、自分の体に向き合って、何が今必要なのかを考えて補っていきましょう

自分に手をかけて向き合ってきた人は、更年期後の健康と美容に良い影響があるはず。セルフメンテナンスをすれば、5年後10年後と言わず、来週の体に結果が出ると思います。

更年期はゆらぎやすい時期。自分の心と体のご機嫌を毎日整えて、心地よい毎日を過ごすことが、自分も周りも幸せになる秘訣だと思っています。

ヒロミ 分かりました!今日教えていただいたストレッチやツボ押しは簡単だったので、生活のなかに取り入れてメンテナンスしていきたいと思います。先生、今日はありがとうございました。


<この記事を監修いただいた先生>

柳本 真弓 先生
目白鍼灸院院長
詳しいプロフィールを見る

ヒロミ
45歳。夫と小学生の子ども2人の4人家族。結婚を機に仕事を辞め、現在は専業主婦となり家庭優先の生活をしている。約2年前から手足のしびれがあるほか、生理周期が短くなり、生理前には頭痛も。冷えや寝つきの悪さにも困っている。

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