更年期の目の疲れ。梅雨の時期はどう乗り切る?
読者代表のヴィーナスたちが、更年期世代のお困りごとを専門家にインタビューして解決する「お悩み解決隊」。今回のお悩みは‟目の疲れ”です。毎日パソコンとにらめっこしているキャリアウーマンのナオミは、梅雨の時期に、目が一層疲れやすいとのこと。更年期トータルケアインストラクターの永田京子先生に、目の疲れを改善するセルフケアを教えてもらいました。
- 梅雨になると、目が疲れやすくなるのはなぜ?
- 更年期に注意すべき目の違和感。気になったら早めに受診を!
- 目の疲れはこう癒やそう!とっておきのセルフケア
- スキマ時間にサッとできる、目のエクササイズとツボ押し
- 普段から積極的に摂りたい、目に良い栄養素
- 目の負担を軽くする、老眼鏡やルーペの上手な使い方
- 更年期からの目の疲れ。早めの対策で、目の健康を維持しよう!
梅雨になると、目が疲れやすくなるのはなぜ?
ナオミ 先生、目の疲れについて相談させてください。仕事でパソコンを見ることが多いので、昔から目を使い過ぎている自覚はあったのですが、最近より一層、目の疲れがつらくなってきました。
永田先生(以下、永田) ナオミさん、それはお困りですね。パソコンやスマートフォンのディスプレイを長時間見続けると、目の筋肉が緊張します。また、デジタル機器が発するブルーライトは波長が短くエネルギーが高いので、目の網膜にダメージを与えます。その影響もあるでしょう。40歳を過ぎた頃から増えてくる老眼も、目の疲れの原因の一つです。老眼になると、水晶体の柔軟性が低下してピント調節が難しくなるので、特に近くのモノを見るときに目が疲れやすくなります。
ナオミ 老眼、そうなんですよね!本当はスマホの文字サイズも大きめに設定変更したいのですが、「こんな大きな文字にしているんですか!」と言われるのが恥ずかしくて、まだ細かい文字を頑張って読んでいます…(笑)。
あと、私だけかもしれませんが、なぜか梅雨の時期になると、いつにも増して目が疲れやすくなる気がしています。
永田 目の疲れには季節も関係がありますよ。湿度が高くなる梅雨の時期には、目に負担がかかり疲れやすくなるんです。梅雨は、気圧、温度、湿度の変化が激しく、頭痛や自律神経の乱れを引き起こす「気象病」になりやすいとき。自律神経のバランスが乱れると、目がさらに疲れるのです。
梅雨を過ぎたら過ぎたで、今度は紫外線が強くなる夏がやってくるので、目にとって厳しい日々が続きます。
ナオミ 何もケアをせず疲れ目を放置しているのは、やっぱり良くないでしょうか?
永田 そうですね。目の疲れと関連して起こりがちなのは、肩こりや頭痛でしょう。
目の筋肉が緊張すれば首や肩に負担がかかりますので、肩こりにつながることがあります。ひどくなると、めまいや吐き気を催す場合も。また、目の疲れから心身に疲労がたまれば、片頭痛や緊張型頭痛にもつながる可能性があります。目の疲れは放置しないで、適切な休憩やケアをしていくことをおすすめします。
ナオミ 目が疲れすぎると、視力が落ちるなんてことも…?
永田 目が疲れて視力が低下したように感じても、適切な休憩やケアを行えば、ほとんどの場合、視力は回復します。ただ、長時間疲れ目の状態が続くと、眼精疲労が慢性化してしまい、視力低下や目の不調が常態となってしまうので、やはり普段から目の疲れ対策をとったほうがいいですね。
更年期に注意すべき目の違和感。気になったら早めに受診を!
ナオミ 更年期の体の変化が目に悪影響を及ぼすこともあるんでしょうか。
永田 更年期はホルモンバランスが変化する時期。涙の質が変化し、ドライアイになりやすいなど、目の不調を感じる場面も増えます。更年期からの目の不調は一過性のものとは限りません。放っておかずに、眼科を受診したり、適切なセルフケアをしたりしましょう。目の健康を維持するためには、目を休ませる時間をつくること、生活習慣の改善、全身の血流を良くするための適度な運動などが大切です。
また、目の不調に病気が隠れている場合もあります。急激な視力低下や光の眩しさ、目のかゆみや充血、モノが2重に見えるといった異常があれば、クリニックを訪ねたほうがいいでしょう。どの病気も早期発見が重要で、治療をすれば進行を遅らせることができます。更年期以降は、定期的に眼科検診を受けることをおすすめします。
【更年期世代に起こりうる目の病気】
●緑内障
眼圧が高くなり、目と脳をつなぐ視神経が障害される病気。徐々に視野障害が起こってくる。
●加齢黄斑変性
モノを見るときに重要な働きをする黄斑という組織がダメージを受けて、視力が低下する病気。視野の真ん中が見えにくくなる。
●糖尿病性網膜症
糖尿病が原因で、目の網膜血管に影響を与え視力が低下する病気。初期では自覚症状はほとんどないが、目の中では出血があるなどの異常が起こっている。
目の疲れはこう癒やそう!とっておきのセルフケア
ナオミ なるほど、「たかが目の疲れ」と思わずに、日ごろからケアをしたり、目の状態に注意を払ったりしなくてはならないということですね。具体的には、どんなケアをすればいいのでしょうか。
永田 目の疲れや不調の予防に最も効果的なケアは休息です。目を使うばかりでなく、十分な休憩をとり、目の周りの血行を良くすることがポイントです。ほかにも、簡単にできるセルフケアをご紹介しますね。
【目の健康のためのセルフケア】
●運動
適度な運動を続けていると、全身の血行が促進され、目の疲れを軽減できます。ウオーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつくってみてください。また、目のストレッチも目の筋肉をリラックスさせ、目の疲れ予防に役立ちます。
●デジタル機器の使い方を工夫する
スマホやパソコンなど、デジタル機器の使用時間を減らすと、目の負担を軽減できます。また、デジタル機器を使用する場合は、ブルーライトカットのメガネをかけ、20分おきに20秒程度、休息の時間をつくります。遠くを見る、目を閉じるなど、目を適度に休めるとよいでしょう。
●目の周りをマッサージする
目の周りの筋肉を優しくマッサージして血行を促進させれば、目の疲れを和らげることができます。
●ホットタオルで血行を促進する
温かいタオルを目に当ててリラックス。血行を促進し、目の疲れが緩和されます。
●目薬を使って症状を軽減する
血行促進、涙液の分泌促進、充血緩和などの作用がある目薬を選べば、目の疲れや乾燥を一時的に軽減できるでしょう。
●良質な睡眠をとる
十分な睡眠をとることで、目の疲れを回復できます。なお、寝る前にはスマホやパソコンを使わないようにしましょう。ブルーライトの影響から目を守れるだけでなく、質の良い睡眠がかない、目や心身の疲労回復につながります。
●できるだけ目をこすらない
目をこすると、目の表面が傷つき、炎症を引き起こすことがあります。目に違和感があるときは、目をこするのではなく、目の周りを優しくマッサージするなどでケアをしましょう。
●緑を見る
遠くの緑色の風景を眺めることで、目の筋肉を休ませることができます。
●休息時にアイマスクをつける
アイマスクを使って外部からの光や刺激を遮断すれば、心身ともにリラックスしやすくなります。目の筋肉が緩んで疲れが軽減されることも。
●ストレスフリーな生活を心がける
ストレスは目の疲れや不調にも影響を与えます。ストレスを感じない生活を心がけるようにし、目を酷使する場合は、適度に休憩を取り、目を労わる時間を確保しましょう。
スキマ時間にサッとできる、目のエクササイズとツボ押し
ナオミ 考えてみると、パソコン仕事に疲れると、肩こり対策として肩を動かすことはあるものの、目の体操はあまりしていない気がします。私でもできそうな簡単なエクササイズやツボ押しなどがあれば、ぜひ教えてください。
永田 分かりました。それでは目のエクササイズとツボ押しをお教えしましょう。
【疲れ目に効くエクササイズ】
目だけを動かすのではなく、視点を固定したまま首を動かし、眼球のエクササイズをします。このエクササイズでは、更年期に起こりがちなめまいを予防しながら眼球を動かすことができます。
以下の①と②を5セット繰り返して、目の体操をしてみましょう。
(指だと近すぎてピントが合いづらい場合は、壁にかけたカレンダーの数字など、遠くにあるモノに視点を定めて試してみてください)
①腕を伸ばし、手の指先に視点を固定したまま、左右に首を動かす。
②視点を1点に固定したまま首だけ上下に動かす。
【目のツボ押し】
睛明(せいめい)という目頭と鼻の間にあるツボは眼精疲労、目のかすみのケアに効果があります。眼球を押さないように注意しながら、やさしく5秒×5回ほど指圧します。
ナオミ なるほど、これなら仕事中でも簡単にできそうです!
普段から積極的に摂りたい、目に良い栄養素
ナオミ 目に良いという栄養素もよく聞きますが、目の健康には食生活もきっと大事な要素ですよね?
永田 そうですね、食生活は大事です。まずは、バランスのとれた食事を基本として、ビタミンA、ビタミンC、ルテイン、アントシアニン、オメガ-3脂肪酸など、目に良い栄養素を含む食材を上手に摂っていきましょう。
【目の疲れに効く栄養素と、それを含む食材】
●ビタミンA
人参やカボチャ、レバーなどに含まれ、目を乾燥から守り、目の細胞の再生を助ける効果があります。
●ビタミンC
オレンジ、ブロッコリーなどの果物や野菜に多く含まれる栄養素で、抗酸化作用があり、目の健康を維持する効果があります。
●ルテイン
ほうれん草、ケール、ブロッコリーなどの緑黄色野菜に多く含まれており、強力な抗酸化作用があります。
●アントシアニン
ブルーベリーや黒豆、ナスなどの主に青紫や黒など色の濃い食材に含まれています。目の疲れや視力低下を予防する効果があります。
●オメガ-3脂肪酸
サバ、イワシ、アジなどの青魚やナッツ類に含まれ、目の乾燥(ドライアイ)や眼精疲労を軽減させる効果があります。
ナオミ 忙しくて食生活が乱れてしまうときは、サプリメントで栄養素を補完するのは意味がありますか?
永田 もちろんです。食事から栄養を摂るのがベストですが、食生活が偏りがちなときはサプリメントを活用するのもいいでしょう。
ただ、アレルギーや過剰摂取には注意が必要です。また病気療養中の場合や、服薬している場合は医師と相談してください。
目の負担を軽くする、老眼鏡やルーペの上手な使い方
ナオミ 私は老眼鏡を作りはしたのですが、周囲から「もうそんな年齢?」と思われるのが怖くてなかなか使えていません。でもきっと、老眼鏡を使ったほうが目の疲れは和らげられますよね?
永田 そうですね。自分の目に合った度数の老眼鏡であれば、視力を補正できるので、老眼鏡なしで無理して見ようとするよりも目の疲れが軽減できます。老眼鏡やルーペの上手な使い方についてお話ししましょう。
●老眼鏡を上手に使えば、目の疲れを軽減できる
老眼鏡は、パソコンや書類を見る際、裸眼で見えづらいときに使います(遠くを見る際や歩行中などは老眼鏡をつける必要はありません)。普段からメガネを使用している方で、掛け外しが面倒な場合は遠近両用メガネを使う手もあります。ご自身にとって、ストレスがない方法は何かを考えてみてください。
●手先に集中したいときは、ルーペを使うのも◎
手芸や細い作業をする場合は、ヘッドルーぺやスタンドルーペなどを使って、目に負担をかけず、楽に作業できるよう工夫しましょう。
スタンドルーペは視野を固定できることがメリットです。両手を自由に使え、安定して対象物を拡大できる便利さがある反面、持ち運びが不便ですし、保管場所を取ります。一方ヘッドルーペは、調整がしやすく軽量で持ち運びが容易ですが、長時間使用すると頭に負担を感じることもあります。どちらも、ライト付きのものや倍率を変えられるものなどがありますので、ぜひ自分に合ったものを見つけてください。
●目を使う作業中には、適度に休息を
目を凝らす時間が長くなると、目の筋肉が緊張し続け、疲れがたまります。老眼鏡やルーペで集中して目を使うときには特に、20分に1回程度は休憩時間を作って、遠くを眺める、目を閉じる、ストレッチをするなどして、目の疲れをためないようにしましょう。
更年期からの目の疲れ。早めの対策で、目の健康を維持しよう!
ナオミ 永田先生、最後に更年期世代にメッセージをいただけますか。
永田 更年期世代から目の疲れを気にしていくことは、この先の人生にもプラスです。
日ごろから適切にセルフケアを行いつつ、定期的に検診に行っていれば、視力の低下が予防でき、目の病気があった場合は早期発見できます。また、目の疲れによる頭痛や肩こりを予防できれば快適な毎日が過ごせますし、この先の視力の維持、目の健康の維持にもつながります。
目の疲れや不調はつらいものですが、気付いたときから簡単なセルフケアに取り組めば、改善が期待できます。できるところからやってみてくださいね。
ナオミ 先生、目が疲れやすい梅雨の時期に、こうしてお話を伺えてよかったです。目は疲れるものの、更年期ともなると不調なんて山ほどあるので、目の健康について深く考えることはありませんでした。でも、更年期以降もいろんな素晴らしい景色や世界を見たいから、目のケアは常にやっていこうと感じました。今日はどうもありがとうございました!
<この記事を監修いただいた先生>
永田 京子 先生
株式会社ウェルネスシアター代表 / 更年期トータルケアインストラクター
▼詳しいプロフィールを見る
ナオミ
52歳。未婚。仕事では管理職としてバリバリ働いている。約1年前から頭痛や肩こり、目の疲れがひどくなり、最近では高血圧や高コレステロール、肌の乾燥の症状も。生理周期が極端に短くなってきているのが悩み。