今知りたい、更年期のくすみ対策。スキンケアと生活習慣で改善しよう
読者代表・ヴィーナスたちが、専門家に更年期のお悩みを相談する『お悩み解決隊』。今回は、美意識の高い48歳のユミコが、皮膚科専門医の川村都美先生に肌のくすみの解決法を相談します。更年期になって、顔色が悪く見られがちなのが気になるというユミコに、川村先生がアドバイスしてくれたのは、スキンケアとインナーケア、ダブルのアプローチでした。
更年期に肌がくすむのはなぜ?女性ホルモンの減少も一因です
ユミコ 先生、実は最近、肌のくすみが気になっています。鏡を見ると、昔のような透明感がなくなり、顔色が悪く、元気がないように見えるんです。周りからも、実際より老けて見られるようになっている気もします。
川村先生(以下、川村) 肌の透明感や明るさが失われ、顔全体が本来の明るさよりも暗く見える状態が「くすみ」ですから、まさに今のユミコさんのお悩みですね。肌がくすむと、周囲からは不健康で暗い印象に見えてしまいます。
更年期は、長年の紫外線による影響が出やすい世代。それに加えて、肌がくすむのは、女性ホルモンであるエストロゲンの減少に原因があります。
エストロゲンには線維芽細胞(皮膚の真皮にある細胞)を活性化する働きがあり、それによってコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などが作り出されていました。しかし、更年期にエストロゲンが減少すると、皮膚が薄くなり、肌の水分量が減って乾燥しやすくなってしまいます。シワが増え、たるみが目立つようになるほか、ハリや弾力、ツヤがなくなるんです。エストロゲンが減少すると、肌のターンオーバーが遅くなり、古い角質が肌の表面に溜まりやすくなることも。
ちなみに、くすみにはいろいろな種類があるんですよ、ご存知でしたか?
【くすみの種類】
●メラニンくすみ(茶くすみ)
日焼けや摩擦などの炎症、活性酸素などによってメラニン色素が大量に作られ、その大量のメラニンが排出されないことで起こります。
出やすい部位:両頬上方、目の周り、鼻下
●汚れくすみ(グレーくすみ)
古い角質がたまって肌の透明感が失われます。
出やすい部位:小鼻
●乾燥くすみ
角質層に保持されている水分や油分が不足して起こります。
出やすい部位:顎
●黄くすみ
糖質過多になると、余分な糖質がタンパク質と結びつくことで、糖化が起こります。糖化されるとAGEs(糖化タンパク質)が生成されますが、このAGEsの色が黄褐色なので、肌が黄色くくすんで見えるようになります。
出やすい部位:顔全体
●血行不良くすみ(青くすみ)
血液やリンパの流れが悪くなって起こります。
出やすい部位:目の下
ユミコ エストロゲンの低下がくすみの原因だなんて…!本当に、更年期は困りものですね…(苦笑)。それに、くすみにこんなに種類があるなんて驚きです。
今日から始めたい、くすみ改善のためのスキンケア
ユミコ くすみはエストロゲン減少のせいと言われてしまうと、更年期の私にはどうしようもない気がしてしまいますが…。今からでもできることがあれば、ぜひ教えてください。
川村 くすみを改善するためには、新しい肌への生まれ変わりの仕組み、つまり肌のターンオーバーを正常に整えることが大事です。ターンオーバーの促進のためには、乾燥対策やスキンケアの見直し、紫外線予防にインナーケアなど、肌に良い生活習慣を実践しましょう。
【くすみ肌のケアのポイント】
●乾燥させない
更年期には肌の水分量が減り、今までよりも乾燥しやすくなるので、洗顔での皮脂の取りすぎに注意しましょう。クレンジング、洗顔料の見直しも大切(後述)。保湿はたっぷりと。ピーリングやレチノール化粧品などのスペシャルケアも有効です。
●擦らない
擦ると肌はくすみます。クレンジング、洗顔時、濡れた肌を拭くときも擦らないようにしましょう。何か塗るときも優しく肌に置くようにつけてください。
●ターンオーバーを正常に保つ
ターンオーバー(新しい肌への生まれ変わり)が遅くなると、くすみにつながります。ターンオーバーを促進するために、生活習慣を整えるようにしましょう(後述)。
●紫外線を予防する
くすみの予防には、紫外線対策が最も重要です(後述)。
●インナーケアをする
スキンケアだけを気にするのではなく、体の内側からケアをしましょう(後述)。睡眠不足やストレスを解消し、バランスの取れた食生活を心がけてください。
【くすみ改善のためのスキンケア法】
①紫外線予防をしっかりと
冬になると、夏より紫外線を気にしなくなりますが、冬にも日焼け対策は必要です。きちんと日焼け止めを使うようにしましょう。
○日焼け止め、下地、ファンデーションの選び方
SPFは、特に紫外線を強く浴びる生活でなければ30くらいで良いでしょう。真夏や屋外で長く紫外線を浴びる場合は50がおすすめです。
汗をかくときは、ウォータープルーフタイプの日焼け止めを使用してください。
○紫外線予防の化粧直しのポイント
紫外線を予防するためには、日焼け止めの塗り直しも大事です。朝塗っただけで終わりにせず、2~3時間おきに塗り直すのがベター。
日焼け止めにもいろいろな種類があります。塗り直しには顔の上から吹きかければ済むスプレータイプが便利ですが、パウダータイプを使っても良いですね。スティックタイプも手を汚さずに使えて衛生的です。
○紫外線対策グッズ
帽子、日傘を選ぶ際は、UVカット機能がついているものを選んでください。フェイスカバーも必要に応じて使用すると良いと思いますが、頬を擦ってしまうようだったらやめましょう。また、顔ではありませんが、半袖を着る際には腕の日焼け予防のためにアームカバーを忘れずに!
②たっぷりとケチらずに使える値段の化粧品を購入する
不純物を取り除く精製の過程が雑な可能性があるため、あまりに安すぎる化粧品は要注意。かといって、高すぎる化粧品を使う必要はありません。
成分を十分に肌にいきわたらせるため以外にも、擦らないでつけるために、化粧品をたっぷり使うことはとても重要です。安すぎず、ケチらないで使えるくらいのお値段の化粧品を選んでください。
③クレンジングや洗顔で擦らない
クレンジング・洗顔で、皮脂を取りすぎないこと、擦らないことが大事です。丁寧に汚れを浮かせて取るように、優しく肌になじませましょう。
クレンジングは、クリームクレンジング、W洗顔がいらないジェルクレンジングや泡タイプのクレンジングがおすすめです。オイルクレンジングはクルクルと擦りがちなので、あまり使わないほうがいいでしょう。
④洗顔は入浴時に行う
洗顔は入浴時に行うとベター。毛穴が開いていて汚れが浮き出ているので、このタイミングが効果的です。洗顔後、スキンケアアイテムは、両手にたっぷりとり、擦らずに優しく肌に置くようにつけていくと良いでしょう。
⑤定期的にピーリングなどのスペシャルケアを行う
肌のターンオーバーのリズムを整えるためには、定期的なピーリング、レチノール化粧品の使用もおすすめです。そのときも、肌を決して擦らないように使用してください。
なお、日常的にピーリングをするなら、週2回程度にとどめましょう。成分はお肌に優しいものを選ぶこと。はがすタイプのピーリングもありますが、はがす際に、肌をこするのと同じ負担をかけてしまうのでやめてください。
⑥積極的に改善したいなら、美容クリニックへ
くすみが気になるようなら、できるだけ早い段階で美容クリニックに相談すると、解決が早くなりますよ。美容クリニックには、市販やエステではできない治療法がいろいろあるので、くすみ改善への近道です。
ユミコ どのくらいの価格帯の化粧品を買うべきか、いつも悩んでいたので、今日聞けてよかったです!安すぎず、高すぎず、惜しげもなく使える価格帯の化粧品がいいのですね。
くすみ改善は体のなかから。生活習慣改善のヒント
ユミコ ここまで聞いてきて、ただ悩んでいるだけではなく、更年期世代は積極的にくすみの対策をとるべきなんだと分かりました。スキンケアアイテムも選び直す必要がありますね。
川村 そうですね。ここまではスキンケアについてお話してきましたが、くすみを改善するためには、生活習慣を整えることがとても大事なんですよ。食生活やストレス管理、良質な睡眠をとることなど、くすみを改善するインナーケアについてお伝えしていきましょう。
【生活習慣を整えて、くすみを改善】
①食生活
甘いものの摂り過ぎは、糖化の原因になるので控えましょう。ビタミン、ミネラルが豊富な野菜、タンパク質をしっかり摂取してください。
②サプリメントの服用
エストロゲンに似た働きをしてくれる大豆イソフラボンのサプリメントや、糖化対策サプリメントを摂るのがおすすめです。また、アンチエイジング対策としてポリフェノール(プロアントシアニジンなど)を摂るのもいいでしょう。
③ストレス管理
定期的にリラックスすることはとても大切です。なぜなら、強いストレスが長く続くと、血管が収縮して血流が悪くなり、男性ホルモンの分泌が増えて、免疫機能が低下してしまうから。その結果、肌のターンオーバーが正常ではなくなり、皮脂の過剰分泌や紫外線によるメラニンの増加を促進し、肌バリア機能も低下させてしまうんです。
具体的なリラックス方法:ゆっくりとぬるめのお湯につかる。好きな音楽を聴く。アロマテラピー。軽い有酸素運動。ヨガ、ストレッチ。家族や親しい友人とのおしゃべり。土いじり、ガーデニング。旅行、ドライブ。部屋の模様替えなど。
④良質な睡眠
良質な睡眠はなによりも大切にしましょう。良い睡眠をとっていないと、以下のようなさまざまな問題が起きてしまうので要注意です。
・成長ホルモンの分泌が減り、ターンオーバーが乱れて、古い角質が排出されずに溜まってしまう。
・コラーゲンやヒアルロン酸の生成が減ることで、肌が乾燥しやすくなる。
・メラトニンが減ることで活性酸素が増え、肌の老化が進む。
・自律神経が乱れて免疫力が低下することで、肌のハリや潤いが失われる。
・敏感肌になり、乾燥や日焼けなどの影響を受けやすくなる。
⑤くすみ改善のためにはマッサージは控えめに
マッサージは肌を擦ることになるので、あまりおすすめはしません。指圧のように押さえるのであれば、強すぎない程度でするのは良いかもしれませんが、やみくもにやると逆効果になることも。自己流の間違えたやり方でマッサージをしてしまうことが多いので注意してください。
⑥運動で血行改善
運動によって血流が良くなると、栄養素や酸素が肌に届けられ、肌のターンオーバーも活性化されます。
有酸素運動、ヨガ、ストレッチのほか、筋トレも基礎代謝量をアップさせるので、美肌につながりますよ。
⑦水分を摂る、室内を加湿する
乾燥によるくすみを予防するため、こまめに水分を摂ったほうがいいでしょう。体重1kgにつき40ml程度、水分を摂ることが美肌のために効果的と言われています(体重50kgの場合は2Lという計算になります)。一般的には、飲料水から摂取する1日の水分量の目安は、1.5~2Lとされているので、参考にしてください。
水分を摂る際には、30分ごとにひと口、常温の水をこまめに摂取することをおすすめします。起床時の朝一番、運動前後、入浴前後、就寝前には特に水分補給してください。
また乾燥も大敵なので、部屋の加湿にも気を遣うこと。湿度60~65%が理想です。
ユミコ 生活習慣を整えることが、くすみの改善にも重要なんですね。特に水分は、努めて摂るようにしようと思いました。加湿もくすみ対策になるなんて…。この冬は加湿器をきちんと使いたいと思います。
肌のくすみを取って、これからの人生を晴れやかに
ユミコ 先生、肌のくすみが気になりつつも、今までどおりのスキンケアでいいものだとばかり思って、深く考えていませんでした。今回ご相談して、改めてくすみのために自分ができることをやってみようという気持ちになりました!
最後に、くすみに悩んでいる更年期世代に向けて、メッセージをいただけますか?
川村 肌色のくすみがとれると、朝、鏡を見たときに晴れやかな気持ちになり元気が出ますし、朝、気分が良いと1日が健やかに過ごせて幸せな気持ちになれるはずです。肌がきれいな方は、比較的健康に気を遣われているせいか、健康寿命も長いといわれています。女性の平均寿命年齢は、現在87歳。人生まだまだ長いですし、くすみのない肌で、元気で幸せに過ごしていただきたいです。
ユミコ 肌がきれいな人は健康寿命が長いなんて!私も、年をとっても、健康でキレイな女性でいたいです。今日のお手入れから見直して、くすみのない肌を取り戻したいと思いました。先生、今日はどうもありがとうございました!
<この記事を監修いただいた先生>
川村 都美 先生
とみ皮膚科クリニック院長
▼詳しいプロフィールを見る
ユミコ
48歳。夫との2人暮らし。自営業をしながら、自分時間も楽しんでいる。2年半前から足のしびれや股関節の痛み、胃の不調を感じている。生理周期が短くなった影響で貧血や立ちくらみの症状があるほか、動悸や汗も頻発。冷え性もひどくなってきている。