なぜ更年期にビタミンDが必要なのか?
丈夫な骨を維持するには、カルシウムに+αが必要
女性は更年期を迎えると、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が急激に減少することで、不調があらわれやすくなることはよく知られています。
高齢者の転倒や骨折の大きな原因になる「骨粗しょう症」もその1つ。エストロゲンには骨密度を正常に維持する働きがあるため、更年期以降にエストロゲンの分泌量が減少すると、骨がスカスカの状態=骨粗しょう症になるリスクがあがってしまうのです。
年齢を重ねてからの転倒や骨折は、結果として寝たきりや要介護状態につながりやすく、著しく健康寿命を引き下げてしまいます。そうしたことを防ぐためにも、更年期以降の女性はこれまで以上に意識的に骨を丈夫にするための努力が必要になります。
「骨を丈夫にする方法」と聞くと、まっ先に思いつくのは「カルシウムを摂る」ということかもしれません。カルシウムは骨の健康に欠かせない成分であることに加え、筋肉の収縮にも関連する成分ですので、丈夫な骨づくりと転倒防止のための筋肉、両方にとって必要です。しかし、カルシウムは吸収されにくい栄養素なので、せっかく摂ったカルシウムを体内で効率よく働かせるためには、もうひと工夫が必要です。
そこで、カルシウムとともに摂取したい重要な成分として、「ビタミンD」がクローズアップされます。
ビタミンDは、カルシウムが小腸で吸収されるのを助けるのと同時に、カルシウムの血中濃度を一定に保つ働きをもち、骨の健康維持に非常に重要な役割を果たします。
また、最近のさまざまな研究では、ビタミンDには筋力やバランス力も高め、転倒や骨折を防ぐ効果があることがわかってきました。ビタミンDを十分に摂取すると、摂取しない場合に比べて、転倒が19%減少、大腿骨頸部骨折が30%減少したという海外の研究報告もあります。
ちなみに、アメリカでは流通している牛乳のほとんどがビタミンDで強化されているなど、ビタミンDの摂取を推奨する政策がとられています。
日本人女性の多くがビタミンD不足
更年期やそれ以降の女性にとっては特に重要な栄養素であるビタミンDですが、ビタミンAやB、Cなどに比べるとあまりなじみがなく、その働きをよく知らないという人も多いかもしれません。
ビタミンDは、食品では、きくらげや天日干しのシイタケなどのきのこ類、サケ、いわしなどの魚類などに多く含まれています。また、ほかのビタミンは体内で合成できないのに対して、ビタミンDだけは、日光(紫外線)を浴びることによって皮膚で合成されます。ビタミンDの合成には、晴れた日なら10~15分、曇っている日は30分程度屋外で過ごすようにすればよいとされています。
さて、そんなビタミンDですが、その働きがもつ重要性の割に慢性的に不足している栄養素の1つといわれています。日本人女性のうち、9割がビタミンD不足だとする報告もあるほどです。とくに、加齢とともに不足しがちになります。
ビタミンDは穀類や野菜には含まれておらず、肉類にも多くは含まれていないため、食品からは十分な量を摂りにくいことに加え、加齢とともにビタミンDを活性化する力も弱まってきます。
さらに、夜型の生活を送っている人や病気や体力低下などが原因で日中の外出の機会が少ない人、日照量の少ない地域に住んでいる人、日焼け止めクリームなどで紫外線を強力にブロックしている人などは、日常生活で紫外線を浴びる量が不足しがちになり、皮膚におけるビタミンD合成量も減ってしまいます。
食事から十分なビタミンDを摂れていない人や、日光を浴びる機会が少ない人などは、サプリメントを活用して上手に補うのもよいでしょう。