更年期の不安感はいつ終わる?不安神経症の特徴や原因、改善方法を解説

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なぜか心配事が心に浮かんで落ち着かない。不安で気持ちが張りつめ、くつろぐことができなかったり、じっとしていられない。更年期世代の方は、こういった症状で悩んでいることが少なくありません。
本記事では更年期に起こる不安感の原因や、症状への対処方法について解説しています。更年期の不安感に関するよくある質問へも回答しているので、症状を軽減したい方は参考にしてください。

更年期に起こる不安感の症状

更年期になると、「なぜか心配事が心に浮かんで落ち着かない」「不安で気持ちが張りつめ、くつろげない」などの精神的な不調を感じる人が多くなります。また不安な気持ちになったり、急に落ち着かなくなったりしてしまう人も少なくありません。

更年期に起こる不安感は多くの人が経験しており、自分ではコントロールできない変化によって引き起こされるのがやっかいなところ。更年期の不安感への対処方法については後述しますが、セルフケアで症状が改善しない場合は、我慢しすぎずに専門の婦人科医に相談することをおすすめします。

更年期の不安感とうつ病の違い

更年期の不安感とうつ病の違いは、症状の内容にあります。「不安」とは、対象や根拠がはっきりしないまま、漠然とした恐れを感じることで、対して「抑うつ」とは、憂うつで気分がふさぎ込む状態のことをさします。

<不安の症状>
●ちょっとしたことで驚いたり、気が動転する
●なぜか心配事が心に浮かんで落ち着かない
●不安で気持ちが張りつめ、くつろげない
●突然、理由もなく恐怖感におそわれる

<抑うつの状況>
●物事への興味が持てない
●何をしても楽しい気持ちがしない
●生き生きしない、やる気が起きない
●晴れやかな気持ちがしない

更年期障害に伴う「不安症」 かも?

不安感により日常生活に支障をきたしている場合は、不安症(不安障害)の可能性があります。不安とともに、動悸、呼吸困難、震え、発汗などの身体症状が生じることもあります。

症状は個人差が大きいことから、患者の症状をもとにした治療が行われます。日常生活に支障をきたすほど症状がひどい場合には我慢せず、婦人科や心療内科、精神神経科など専門医への受診をおすすめします。

更年期に不安感が起こる原因

更年期に不安が起こる原因の一つは、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が大きくゆらぎながら低下することにより、自律神経のバランスが乱れることにあります。自律神経の中枢は脳の視床下部で、様々なホルモンの分泌や精神活動なども司っているため、この変調が精神面にも影響を与え、不安を感じたり、落ち着かなくなったりしてしまうのです。

また45〜55歳頃の更年期と呼ばれる時期は、家庭や職場での環境が大きく変化する時期でもあるため、ストレスがかかりやすくなります。職場で責任のある役職につくことがあるほか、親の介護や子どもの独立などが重なると、精神的な負担を感じやすくなるのです。

更年期の不安感への対処方法

更年期の不安感への対処方法には、以下のようなものがあります。
●生活に適度な運動を取り入れる
●日々の食事でセロトニンの材料となるトリプトファンを摂取する
●深呼吸やリラクゼーションを取り入れる
●合谷や百会などのツボを指圧する
●加味逍遙散などの漢方薬を服用する
●ホルモン補充療法(HRT)で女性ホルモンを補う

生活に適度な運動を取り入れる

ウオーキングやストレッチといった、適度な運動を取り入れる方法も有効とされています。運動には、更年期症状の改善や生活の質を向上させる効果のあることが分かっているため、1回15分程度からを目安に始めてみることをおすすめします。

新鮮な空気を吸ったり、太陽光を浴びながら外を歩いたりすることで、精神を安定させる働きのあるセロトニンが分泌されやすくなるため、更年期症状による不安感が軽減されます。

日々の食事でセロトニンの材料となるトリプトファンを摂取する

更年期の不安感をおさえるためには、セロトニンの材料となる必須アミノ酸のトリプトファンを摂取するのも方法の一つです。セロトニンが低下すると、喜びや快楽の原因であるドーパミンや、恐怖や驚きの原因であるノルアドレナリンのコントロールが不安定となるため、不安感やうつなどの症状を引き起こすといわれます。脳内でセロトニンが作られる際、材料としてトリプトファンが必要となるのですが、トリプトファンは体内で生成できないため、食事から摂らなければなりません。乳製品や大豆食品、バナナなどに含まれているため、日々の食事のなかで意識して摂取することをおすすめします。
食べ物から摂取したトリプトファンは、日中は脳内でセロトニンに変化し、夜になると睡眠を促すメラトニンに変化するといわれます。

深呼吸やリラクゼーションを取り入れる

更年期の精神症状に対して、深呼吸やアロマセラピーなどによる心のリラクゼーションが有効である、という報告があります。不安を感じたら、ゆっくりと大きく深呼吸をしたり、自分がリラックスできるお気に入りのものを取り入れてみてはいかがでしょうか。

合谷や百会などのツボを指圧する

更年期になると自律神経のバランスが乱れて、感情のコントロールが難しくなります。自律神経のバランスを整えるためには、合谷(ごうこく)や百会(ひゃくえ)などのツボを指圧するとよいでしょう。

合谷は手の甲、人差し指と親指の付け根にあり、百会は両耳をつないだ線上、頭のてっぺんにあります。どちらも万能のツボとして知られており、更年期の不安感を軽減する働きが期待できます。

加味逍遙散などの漢方薬を服用する

自然治癒力を高めて体と心を整えていきたい方は、漢方薬を服用するとよいでしょう。更年期の不安感に対する治療に用いる場合は「加味逍遙散(かみしょうようさん)」や、「加味帰脾湯(かみきひとう)」「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」等を服用することで、症状の軽減が期待できます。特に加味逍遙散は、不安感やいらだちなどの精神神経症状に加え、のぼせや肩こりなどにも効果が期待できます。

ホルモン補充療法(HRT)で女性ホルモンを補う

ホルモン補充療法(HRT)とは、エストロゲンを補う(エストロゲン製剤単独、もしくはエストロゲン製剤+黄体ホルモン製剤の併用)治療方法のことです。薬剤を投与することで女性ホルモン(エストロゲン)を補い、更年期症状の緩和を目指します。飲むタイプの錠剤や貼るタイプのパッチ、塗るタイプのジェルなどがあります。保険適用があり、いずれも比較的安価に取り入れることができます。

サプリメントで必要な栄養を補う

日々の食事での摂取が難しい場合は、サプリメントで補うことも手軽な一つの方法です。セロトニンの材料となる「トリプトファン」や、強い抗酸化作用をもつポリフェノールの一種「ブドウ種子由来プロアントシアニジン」を摂取することで、不安感をおさえて精神を安定させることができます。

▼更年期に摂りたい成分/ブドウ種子ポリフェノール

ただしサプリメントを摂取する場合は、定められた用法・用量を守るようにしましょう。定められた用量以上に摂取しても効果が増大するようなことはないため、日常的に継続して摂取することがおすすめです。

更年期の不安感に関するよくある質問

ここからは、更年期の不安感に関するよくある質問へ回答していきます。

更年期の不安感はいつ終わりますか?

人によって異なるため、いつ終わるとはいえません。一般的に更年期のピークは2〜3年、多くの人は5年ほどで不調がおさまるといわれます。今できる対策でつらい時期を乗り切りつつ、症状が長引く強い場合や日常生活に支障がでるほどつらいときは、一人で抱え過ぎずに早めに医療機関を受診することをおすすめします。

更年期の不安感に有効なツボはどこですか?

手の甲、人差し指と親指の付け根にある「合谷(ごうこく)」や、両耳をつないだ線上、頭のてっぺんにある「百会(ひゃくえ)」などが有効です。どちらも自律神経のバランスを整える働きがあるため、更年期の不安感を軽減する効果が期待できます。

更年期の不安感に有効な漢方薬を教えてください

加味逍遙散(かみしょうようさん)や加味帰脾湯(かみきひとう)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)等を服用するとよいでしょう。いずれも、更年期症状による不安感を軽減する効果が期待できます。

更年期の不安感に有効なサプリはありますか?

体内でセロトニンの材料となる「トリプトファン」 や、強い抗酸化力をもつポリフェノールの一種である「ブドウ種子由来プロアントシアニジン」が含まれているサプリを摂取するとよいでしょう。定められた1日あたりの摂取量は守って継続するようにしてみてください。

頑張っている自分のためにセルフケアを始めよう

日常生活のなかで理由もなく不安になったり、些細なことで気が動転してしまっても、自分のなかで我慢して溜め込んでしまいがちです。しかし更年期の不安感は、コントロールできるものではありません。症状の原因は、女性ホルモンの分泌量低下による自律神経バランスの乱れやストレスなど多様で複雑だからです。

症状の原因を客観的に認識して、不安感を軽減できるようにセルフケアを始めていきましょう。不安感を和らげるためには、ホルモン拡充療法や漢方療法による治療のほか、適度な運動やツボ押しなどによるセルフケアが有効です。自分がリラックスできる時間をつくることも、症状の改善につながりますよ。

▼更年期の症状/不安・気分の落ち込み・うつ


参考文献
女性の健康推進室 ヘルスケアラボ|厚生労働省研究班監修|不安


<この記事を監修いただいた先生>

寺内公一先生

寺内 公一 先生
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科茨城県地域産科婦人科学講座教授
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