指が痛いのは更年期のせい?原因や対処法について解説!

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年のせいか「手がこわばって箸が長く使えない」「ペットボトルが開けられない」「関節が腫れて変形してしまった」など、手の不調に悩んでいる方も多いのではないでしょうか?こういった諸症状は老化のせいではなく、実は更年期によるものかもしれません。この記事では、手指の病気やその予防、治療法、おすすめのサプリメントなどについて紹介します。



指の痛みやしびれ、実は更年期のせいかも!

更年期に入ると、女性ホルモン(エストロゲン)が大きくゆらぎながら減少することで、朝起きたときに手がこわばったり、指の関節に痛みが生じることがあります。これらの原因は、腱(筋肉と骨をつなぐ部位)周囲、腱鞘(腱を包んで滑らかに動くよう支える組織)周囲、関節内にある滑膜(関節を包む膜)による障害です。滑膜には女性ホルモンを感知する、α・βという2種類の受容体があるといわれており、このうちのβが炎症を起こす原因。β受容体が50歳から増加するという文献もあり、ホルモンの低下以上に急速に症状が悪化することがあります。

更年期に現れる指の症状には、以下のようなものがあります。

手指関節の腫れ、疼痛、水泡形成、こわばり
指の引っ掛かり、屈曲障害、伸展障害
夜間・早朝の手指のしびれと痛み
ボタン掛けができない
財布から小銭がつまみ出しにくい
母指(親指)の付け根が痛くて洗濯ばさみが持てない


症状が出る部位は、腫れや痛み、水泡は各指の第1関節に多いですが、第2関節にも起こります。しびれは母指(親指)から環指(薬指)の中指側半分に生じますが、中指だけ、母指だけということもあります。なかには変形が足趾(足の指)に生じる方もいますが、圧倒的に多いのは手指の関節。これは、手指の方が屈曲(握る、つまむ等)する頻度が多いこと、また力を入れてその動作を保持し持続させることが多いためです。



あなたの症状はどれ?女性ホルモン減少による手指の病気

更年期に女性ホルモンが減少することによって起こる手指の病気には、ばね指、ドケルバン病、へバーデン結節、手根管症候群など、さまざまな種類があります。病気の種類や主な症状、原因などを解説していきましょう。


■指の曲げ伸ばしで「パチン」とひっかかる|ばね指

●症状
指全体に痛みが生じて、屈曲が難しくなり、炎症が進行すると引っ掛かりが出てきます。朝、指が曲がったままのことがあり、伸ばすときに反対側の指を使って伸ばそうとすると痛みを伴います。放置していると屈曲できなくなったり、曲がったままになります。手関節や肘、肩関節にも疼痛を感じる方がいます。

●特徴
引っ掛かりとともに痛みがあります。あたかも指がばねになったかのような状況になります。

●原因
腱周囲滑膜の炎症と腱鞘の肥厚が生じ、腱自体も腫れてきます。肥厚したもの同士が擦れ合うと引っ掛かりが生じ、滑膜内の神経終末が刺激され、疼痛が生じます。

●なりやすい人
50代・60代の女性や、手指をよく使う人に発症しやすい病気です。ものを絞る作業やガーデニングなど力作業を行うとなりやすくなります。


■手首の母指側が腫れて痛い|ドケルバン病

●症状
母指を広げるとき、大きな物を掴むと痛みが出ます。具体的には沐浴時に子どもの耳を押さえるとき、美容師が客の頭を洗うときに親指を開く際に痛みが生じます。

●特徴
親指の付け根が痛く、痛みは朝に強く生じます。大きい物が握れず、安静にしてもなかなか治らない痛みです。

●原因
母指を持ち上げる短母指伸筋腱と腱鞘との間で、腱鞘炎が生じて疼痛となります。そのため親指を持ち上げる動作で痛みが出ます。

●なりやすい人
妊娠出産期など若い世代に比較的多く、親指を大きく広げる作業(大きなジャムの瓶を開ける等)でなりやすい病気です。


■指の関節に腫れや痛みがある|へバーデン結節・ブシャール結節

●症状
へバーデン結節は第1関節が腫れて、水ぶくれができたり、指が曲がってくることもあります。痛みは人によって個人差があります。同様の症状が指の第2関節に起こることをブシャール結節といいます。

●特徴
第1(または第2)関節の軟骨がなくなり、関節の変形が生じてきます。膝関節の変形と同様に、水が溜まります。一度変形が生じると、放置したままでは経時的に悪化します。

●原因
遺伝的な因子があります。また、女性ホルモン減少による関節滑膜炎が原因の場合もあります。

●なりやすい人
両親、祖父母等、近親者に手指の変形がある人や、指をたくさん使う職業の人(音楽家、造園業、ピッキング、清掃業等)、雑巾絞りや草取りをよくする方に多く生じます。


■親指から中指までしびれがある|手根管症候群

●症状
母指から環指半分のしびれが、夜間や早朝にあります。疼痛も伴い、肘、肩の痛みも生じます。母指の筋肉の萎縮が始まると、ボタン掛けがうまくできず、お財布から小銭が出しにくくなります。

●特徴
出産前後や50代以降の女性に発症することが多いです。手を振ると楽になることがありますが、再燃しやすいのが特徴です。

●原因
出産前後でも生じることから、女性ホルモンの影響が考えられます。また、力仕事をする男性にも頻繁に見られます。手根管(手首にある骨と靭帯に囲まれたトンネル)に9本の屈筋腱(前腕にある関節を曲げる際に働く筋肉と手指とをつなぐ腱)と正中神経(手の働きにかかわる神経)がありますが、腱周囲にある滑膜の増生(組織や器官が大きくなること)により正中神経が圧迫され、症状が出現します。

●なりやすい人
女性、妊娠前後、出産前後、そして40代後半から60代の更年期女性、手をたくさん使う男性に多く見られます。


■母指の根本が痛くて、ビンが開けられない|母指CM関節症

●症状
物をつかむ、つまむ、食器洗い時のお皿を持つ等の際に、母指の付け根に痛みが生じます。進行すると母指が開きにくくなり、手が小さくなります。

●特徴
親指の付け根が腫れてきます。関節が背側に亜脱臼(関節が正常な範囲から少しはずれた状態)してきて第2関節が過伸展になり、蛇が頭を上げたような、スネークヘッド変形になってきます。思うように手が開かなくなります。

●原因
関節軟骨の変性と関節滑膜の増殖、関節周囲靭帯の弛緩により、徐々に変形が進行します。

●なりやすい人
遺伝的な因子があります。両親、祖父母に症状のある人、50代・60代の女性の頻度が高いです。



更年期の指の痛みの予防・治療には?

更年期に手指に痛みや違和感があった場合、どのタイミングで、病院の何科へ行くとよいのでしょうか。また、手指の症状の予防や対策にはどんな方法がおすすめなのか、ご紹介します。

■早期に医療機関を受診しよう

手指に痛みやしびれ、こわばりなどの症状が出たら、早々に病院を受診するのがおすすめです。受診先は手外科医のいる整形外科・形成外科、もしくは婦人科が良いでしょう。ただ、更年期の指の症状に興味のある先生に当たらないと、適切な診断・治療がなかなか難しいこともあります。同年代の友人に治療してくれる先生を尋ねてみるのも一案です。

手指の症状は、女性ホルモンの減少が原因ではなく、リウマチを含めた膠原病のことがあります。皮膚筋炎や強皮症等、また、知覚障害や、筋力の低下等の症状を伴うようであれば、末梢神経疾患や頸椎疾患、ウイルス性疾患に伴う症状、ギラン・バレー症候群等の病気の可能性もあります。違和感をあったら早めに受診し、診断を仰ぎましょう。

■手指に腫れがある場合は休ませて

腫れを伴う手指の局所の疼痛は、体が「休ませて」と言っているサイン。病院で指の大きさに合わせてプラスチック製の装具を作るなどして、少し休ませてあげるといいでしょう。装具は、刀を使ったら鞘に戻すように、指を使ったら装具に戻す形で装着します。腫れが軽減して装具が緩くなったら装具を再作成して、さらに腫れの少ない、痛みのない指に仕上げていきます。 どうしても指を休ませることが難しい場合には、テーピングをする方法もあります。それも難しい方には、夜間のみの装具装着をすすめています。いずれにしても指使用のコントロールが大切です。



■食生活でケアをする

手指の症状の予防・改善のために、普段の食生活を見直すことも大切です。

更年期に現れる指の症状は、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量低下に起因すると考えられているところもあります。そのため、特におすすめなのは、エストロゲンと似た働きをする成分「大豆イソフラボン」を豊富に含む大豆製品を食事で積極的に摂ること。納豆、みそ、きな粉、豆腐、豆乳等を、調理方法を工夫しながら毎日摂ることが大切です。

大豆イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンに似た骨格をしているため、ホルモン受容器に作用して、女性ホルモンと同様の効果で指の症状を改善することが期待されます。また、大豆イソフラボンにはダイゼイン・ゲニステイン・グリシテインなどの種類があり、特にゲニステインの摂取により、骨の健康に利益があることが明らかになってきました。

ゲニステインはイソフラボン骨格を有する吸収性の高いアグリコン型の成分で、大豆イソフラボンのなかでエストロゲン様作用が最も高く、抗酸化活性が最も強いのが特徴です。ゲニステインは味噌などの大豆発酵食品に含まれ、日本人も長く食している安心できる成分です。また、同じエストロゲン作用を示すエクオールと比較して、ゲニステインのほうがエストロゲン受容体に対する結合力が高いという研究結果もあります。

大豆イソフラボンの他にも、食事では骨の強度に関係するカルシウム、ミネラルの摂取やそれらを腸から吸収しやすくするビタミンD・Kを含む食品も意識して摂りましょう。

■サプリメントならゲニステインがおすすめ

大豆製品からイソフラボンをたくさん摂取することで、手指の症状が軽減している人もいます。ただ、毎日の料理に一定程度の大豆製品を入れ込むのは、メニューを考えたり料理するうえでも大変。その点、サプリメントであれば、摂りたい成分だけを摂取できる上、料理する手間もなく手軽に摂取でき、旅行などの外出時にも携帯できます。継続的な摂取をする場合にはサプリメントを利用するのがおすすめです。

また、様々な種類があるイソフラボンのなかでも、エストロゲン作用が強く、吸収性の高いのはゲニステイン。ゲニステインは大豆発酵食品である味噌に多く含まれますが、味噌は塩分濃度が高いので、高血圧に対して注意が必要です。ゲニステインを主成分とするサプリメントなら、より効果を体感しやすく、塩分の過剰摂取も気にせずに安心して利用できます。ゲニステインの比率が高い“大豆全粒”から抽出されたイソフラボンアグリコンが配合されているサプリメントを選ぶなど、工夫してみてください。



大豆イソフラボンを摂取して手指の健康を維持しよう

更年期に起こりやすい手指の痛みやこわばり。不調を感じる場合は、我慢せず、早めに医療機関を受診するようにしましょう。また、原因は女性ホルモンであるエストロゲンの減少のため、エストロゲンに似た作用がある大豆イソフラボンを、サプリメントも活用しながら補うとよいでしょう。サプリメントは特にゲニステインが入ったものがおすすめです。

必要な成分を上手に摂りながら、手指の健康を維持していきましょう。


田中利和先生
柏Handクリニック院長
旭川医科大学医学部卒業、筑波大学医学博士。数々の病院の整形外科に在籍したのち、筑波記念病院・整形外科部長やキッコーマン総合病院・副院長、株式会社ツカモトコーポレーション社外取締役などを歴任。2020年3月に手の整形外科専門クリニックである「柏Handクリニック」を開院。著書に『イラストでわかる骨・筋肉・神経のしくみとはたらき事典』(ナツメ社)、『クリニックで診る手 鑑別から治療まで』(日本医事新報社/2024年2月発行)。

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