更年期と閉経のメカニズムを学ぶ
閉経とは月経が完全になくなること
閉経とは月経がなくなることをいい、日本人の女性は平均して50歳前後に閉経を迎えますが、閉経すると女性の体にはどんな変化があらわれるのでしょうか?閉経のことをお話しする前に、まずは月経の仕組みについて確認します。
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女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンの2種類があり、どちらも卵巣から分泌されています。しかし、卵巣が勝手に分泌しているわけではなく、≪脳の視床下部―下垂体―卵巣≫がお互いに影響し合いながら、それぞれが分泌するホルモン量を調整しているのです。
そして、そうした連携の中で排卵や月経が起こり、卵巣から女性ホルモンが分泌されるのです。
卵胞の数が急激に減少
思春期から性成熟期の間はこの連携が正しく行われるので、女性ホルモンは順調に分泌されますが、更年期を迎えると急激に減少し始めます。それは、40代になると卵巣の中にある卵胞の数が急激に減少するからです。
女性は生まれたときに卵巣に約200万個の卵胞を蓄えていますが、思春期までに10分の1から40分の1に自然に減り、その後も月経周期ごとに多くの卵胞が自然に消滅します。
そして、40歳を迎える頃には急激に卵胞の数が少なくなり、卵胞自体も老化するため妊娠しにくくなります。50歳頃には卵胞がほとんどなくなり、やがて月経がなくなります。これが閉経です。
閉経後は女性ホルモンがほとんど分泌されない
卵胞を成熟させ排卵にいたる過程で女性ホルモンは分泌されますから、卵胞がなくなるということは、女性ホルモンが分泌されなくなるということを意味します。
ところが、卵胞が減り卵巣がエストロゲンを十分に分泌できなくなっても、脳の視床下部はいままで通りエストロゲンを分泌するように下垂体に指令を出し続けます。しかし、 どんなに指令を出してもエストロゲンが分泌されてこないため、「どうして分泌しないのだ!?」と脳の視床下部は非常に混乱します。
脳の視床下部は女性ホルモンの分泌に関わるだけでなく、自律神経もコントロールしているため、ここが混乱すると、自律神経も乱れて体のあちこちに不調があらわれ始めます。
自律神経は、呼吸や代謝、血圧、発汗、消化など生命維持の根幹を支える機能をコントロールしている神経で、文字通り自律していますから、自分の意思でコントロールすることはできません。
そのため、きっかけのない動悸、のぼせ、発汗、頭痛、肩こりなどの不快な症状があらわれやすくなります。症状は1つとは限らず、複数の症状が重なることも珍しくありません。
人によっては、気分がふさいだり、不安になったり、意欲が低下したりするなど、強い精神症状に悩まされることもあります。この時期の女性は、大きなストレスを抱えやすい年代です。こうした心理的な負担も症状を強くする一因と考えられます。
つまり、更年期を迎えたときに感じる、これまでとは異なる心身の不調は、卵巣機能の低下による自律神経失調症であり、その背景には閉経に至る過程、卵胞の減少に伴うエストロゲンの急激な減少があるのです。
女性の体とエストロゲン
女性ホルモンは女性の体にどのように作用しているのでしょうか。
女性のライフサイクルでみてみると
「小児期」(0~8歳)の段階では、エストロゲンの分泌はまだ始まっていません。しかし、卵巣の中では少しずつ分泌する準備が始まっています。
「思春期」(8~18歳)を迎えると、エストロゲンの分泌が始まり、体が少しずつ丸みをおびて、女性らしく変わっていきます。そして、エストロゲンが十分な量に達すると月経が始まり、18歳くらいには、排卵周期のリズムがほぼ順調になります。
「性成熟期」(18~45歳)は排卵周期が安定し、エストロゲンが順調に分泌量されて、20~30代に出産の適齢期を迎えます。
「更年期」(45~55歳)には卵巣のはたらきが衰え始めて卵胞の数が急激に減り、それにともなってエストロゲンの分泌量も減少します。排卵周期が不順になり、やがて閉経を迎えます。
「老年期」(55歳~)にはエストロゲンの分泌が完全に終わり、子宮や卵巣も萎縮して小さくなっていきます。女性の平均寿命は86歳といわれていますから、およそ30年に及ぶ老年期をエストロゲンの恩恵のない状態で過ごさなければなりません。
このように、普段意識することはありませんが、エストロゲンは女性の人生に深く関わっているのです。
閉経後に要注意!縁遠かったはずの病気が…
実は、女性ホルモンの恩恵が受けられなくなる更年期以降は、骨粗しょう症や動脈硬化など、それまで女性には縁遠かったような病気にかかりやすくなります。
更年期から考える「動脈硬化」の予防と対策をチェック!
今は暴飲暴食をしたり、睡眠が多少不規則だったり、運動不足だったりしても、多少の無理がきいてしまいます。しかし、そのツケは確実に更年期後に回ってきます。
健康であるか否かは、生活の質に大きな影響を与えます。更年期は、その後をどのように暮らしていきたいかも見据えながら、不調をやわらげるための生活習慣の改善やセルフケアを実践して、健康を保てるように心がけていきましょう。