更年期から考える「動脈硬化」の予防と対策

血管のイメージ
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“人は血管とともに老いる”

 この言葉を一度は耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。これは、アメリカの内科医ウィリアム・オスラー博士の有名な言葉です。

血管には動脈と静脈があります。動脈は触れると脈打つのがわかる血管で、酸素や栄養を全身に運ぶ役割を果たしています。一方、静脈は皮膚の表面からでも青っぽく見える血管で、不要になった二酸化炭素や老廃物などを回収しています。

血管の老化は、「動脈」から始まるといわれています。その老化のパターンにもいろいろありますが、もっとも多く見られるのが「動脈硬化」です。

動脈硬化とは、それ自体が病名なのではなく、動脈の血管が硬くなり弾力性が失われているこ状態のことで、血管内腔が狭くなり血液が流れにくくなります。

動脈硬化が起きやすい場所は、血管が湾曲したり、分岐したりしていて、血液の流れが均等にならずよどみやすい部分といえます。では、それが体のどこに多いかというと、生命に関わる心臓や脳なのです。

そのため、動脈硬化が進むと、心筋梗塞や脳梗塞などの重病を引き起こすリスクが高まってしまいます。

更年期までは、女性は男性よりも動脈硬化を起こしにくいのですが、閉経すると心筋梗塞などの発生率が急に上昇します。

「動脈硬化」の3つのリスクファクター

動脈硬化を引き起こしたり促進したりする要因としては、大きく3つのことが考えられます。そして、この3つはすべて、更年期以降の女性においてはとくに注意が必要になるのです。

現在、日本女性の死因の第一位は「悪性新生物(がん)」ですが、第二位の「心疾患」と第三位の「脳血管疾患」、つまり動脈硬化が関係する死因を合計すると、「がん」を抜いてトップになります。
すべての女性にとって、動脈硬化は決して他人事ではないのです。

コレステロール

血液中に悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が増えすぎると血管内に溜まって動脈硬化が促進されます。女性の場合、更年期以降、とくに閉経後は女性ホルモンが減少することによって悪玉コレステロールが増えやすくなってしまいます。
さらに、女性ホルモンの低下は、善玉コレステロールの減少も招きます。健康診断では、この値によく注目してください。

中性脂肪

中性脂肪が増加すると悪玉コレステロールと同様に血管内に溜まるほか、悪玉コレステロールの更なる悪玉化(超悪玉)が加速することがわかっています。中性脂肪は皮下よりも内臓に蓄積しがちです。

そもそも女性にはお尻や太ももなど下半身に脂肪がつく洋ナシ型(皮下脂肪型)肥満が多いのですが、女性ホルモンが減ると、お腹まわりに脂肪がつくリンゴ型(内臓脂肪型)肥満が増加します。
女性の場合はとくに、この内臓脂肪型肥満の状態だと、男性以上に動脈硬化が進むことがわかっています。

高血圧

女性の場合は閉経後、急上昇しがちです。高血圧と動脈硬化は互いに深い関係があります。高血圧が続くと、血液の圧力に耐えるため動脈の血管壁が厚くなり動脈硬化が進みます。
また、動脈硬化で血管が狭くなると、流れにくくなった血液を流すために血圧が上昇します。つまり、高血圧→動脈硬化→高血圧という悪循環が、動脈硬化を加速させるのです。

動脈硬化の対策

◇脂肪の摂り過ぎに注意
日頃の食事と運動が大切なのはいうまでもありませんが、食生活については、特に脂肪の摂り過ぎに注意しましょう。
コレステロールが多い動物性脂肪よりも植物性脂肪を多く摂ることです。食べ過ぎを防ぐ・野菜から先に食べる・食物繊維を十分に摂る・甘いものや果物を摂りすぎない・水分はしっかり摂る、などを意識することが効果的です。

食事の順番

◇抗酸化食品を積極的に摂る
それらに加えて、とくに知っておいていただきたいのは、抗酸化食品を積極的に摂るということです。
緑黄色野菜や緑茶などは抗酸化作用に優れているので、血管の壁を傷つけて動脈硬化を促進する活性酸素を抑えたり、悪玉コレステロールの酸化を予防したりする働きがあります。

抗酸化物質は食品から摂取することが望ましいのですが、3度の食事だけでカバーするのはなかなか難しいもの。その場合は、サプリメントなどを活用するのも効果的ですが、更年期以降の女性にとくにおすすめなのは「ぶどう種子ポリフェノール(プロアントシアニジン)」という成分です。
これは、ポリフェノールの1種で、強い抗酸化作用があると同時に、ホットフラッシュや不眠、不安症状、高血圧など、更年期に多い症状を緩和してくれることが知られています。

ぶどう種子ポリフェノールをチェック!

◇大豆イソフラボンを摂る
抗酸化物質に加えて、積極的に摂取してほしいものに「大豆イソフラボン」があります。分子構造が女性ホルモンに似ていることから、女性ホルモン減少による更年期の諸症状をやわらげる働きがあります。

大豆イソフラボンは、大豆や大豆食品に含まれていますが、アグリコン化して吸収をよくして配合したサプリメントには、ホットフラッシュや不眠症状の緩和に加え、コレステロール値を下げる作用があるものも。動脈硬化の予防にもおすすめです。

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◇運動ももちろん大切
また、動脈硬化を予防するには、運動も大切です。運動をすると、コレステロール値や中性脂肪値を下げて高脂血症を予防したり、肥満を解消したり、ストレスを発散したりするのに効果があり、動脈硬化の発生や進行のリスクを減らすことに役立ちます。
あまり激しい運動をする必要はありません。1日30分程度の有酸素運動、ウォーキングやサイクリングなどをできる範囲で続けましょう。

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